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周術期の禁煙~はじめに [anesthesiology]

Perioperative Abstinence from Cigarettes: Physiologic and Clinical Consequences

Anesthesiology 2006年2月号より

常習的に喫煙していると、大きな生理学的変化が生じるため、手術や周術期の手技による侵襲に対する反応が非喫煙者とは異なることがあり、周術期合併症の発生リスクが上昇する。医療施設における禁煙政策が導入されたため、喫煙者は全員、少なくとも術前のわずかな期間は禁煙せざるを得ない。つまり、手術を受ける喫煙者は皆、身体が喫煙の影響から脱するいずれかの段階に該当するということである。喫煙の影響から脱する過程を理解すれば、禁煙中の喫煙者の治療に役立つであろう。本レビューでは、短期(数時間から数週間)および長期禁煙が、周術期の転帰に関わる生理や病態生理にどのような影響を与え、そしてこの影響が周術期リスクにいかなる変化をもたらすのか、という件についての最新の知見を検討する。また、ニコチン補充療法が周術期の生理に与える影響についても考察する。

米国では、成人の約23%が喫煙し、毎年数百万人の喫煙者が手術を受けている。喫煙は、さまざまな周術期転帰に影響を与える可能性がある。驚くには当たらない。喫煙は、COPD、動脈硬化症などいろいろな疾患の病態生理に関わるほか、一酸化炭素やニコチンといった成分による薬理作用を介し、大きな生理学的変化を生じせしめる(fig. 1)。慢性的なニコチン曝露は、神経系全体(および他の多くの組織)に存在するニコチン性アセチルコリン受容体の機能を著しく変化させる。医療施設における禁煙政策が実施され、喫煙者は全員、少なくとも術前のわずかな期間は禁煙せざるを得なくなった。長期禁煙による生理学的変化についてはよく知られているが、禁煙開始間もない時期の変化についてはあまりよく分かっていない。麻酔科医は日々、喫煙の影響から脱するいずれかの段階に該当する患者と接している。したがって、禁煙開始後の早期変化について知るのは大切なことである。禁煙によって生ずる生理学的変化は、麻酔管理や周術期転帰に影響を与える可能性がある。術前禁煙の至適期間や、麻酔科医はわずかな期間であっても術前禁煙を勧めるべきかそうではないか、という臨床上重要な問題についての答えは、禁煙による生理学的変化についての知見に基づいて導き出すべきである。

教訓 長期禁煙による生理学的変化についてはよく知られていますが、禁煙開始間もない時期の変化についてはあまりよく分かっていません。
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