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周術期の禁煙~禁煙指導 [anesthesiology]

Perioperative Abstinence from Cigarettes: Physiologic and Clinical Consequences

Anesthesiology 2006年2月号より

周術期の禁煙指導

タバコ煙に慢性的に曝露されていると、色々な臓器に多大な生理学的変化が生ずる。その結果、周術期の侵襲に対する反応も変容し、周術期合併症が増加する。手術を受ける喫煙者は皆、身体が喫煙の影響から脱するいずれかの段階に該当するが、この初期段階の態様はまだ十分には解明されていない。喫煙の影響から脱する過程を理解すれば、禁煙中の喫煙者の治療に役立つであろう。喫煙者にとって手術は、術後もずっと禁煙を続けるための絶好の機会である。手術を禁煙教育のまたとない機会として活用する試みは、まだ始まったばかりである。禁煙指導が禁煙に役立つことを示すエビデンスはたくさんある(大部分が外来で得られたデータ)。禁煙指導を周術期管理に適用、評価、普及するにはさらに研究を重ねなければならないが、本レビューで紹介したエビデンスから、周術期禁煙指導についての原則を少なくとも二つ挙げることができる。

第一に、手術によって強制的に禁煙した場合、術後2-3日におけるニコチン離脱症状は予想に反しほとんどない。それでも、禁煙指導が行われなければ、大半の者が間もなく喫煙を再開する。ニコチン補充療法は、安全かつ有効なタバコ依存症治療法である。喫煙関連疾患をすでに発症している患者においても、ニコチン補充用法は安全で有効である。さらに研究を進める必要があるとは言うものの、現在までに蓄積されたエビデンスからは、ニコチン補充療法は周術期にも安全かつ有効であり、有益な選択肢として考慮すべきであると言える。周術期においては、喫煙を続けるよりも、ニコチン補充療法を行う方が余程ましであることは言を俟たない。

第二に、術前禁煙のタイミングに関しては、禁煙期間が長いほど良い結果が得られると考えられる。特に、肺合併症に関しては、長いほど良い。短期間の術前禁煙が有害であるというエビデンスはない。むしろ、短期間でも禁煙すれば、某かの転帰の改善が得られる。術前に禁煙が成功せず、術後しか禁煙できなかったとしても、何らかの効用はある。したがって、禁煙指導はできる限り早い段階(手術日決定時)で開始すべきであるが、たとえ術前の禁煙が守れなかったとしても、周術期のどの段階でも構わないので禁煙指導を行うべきである。禁煙を継続すれば、長期的な健康の向上に大きく貢献する。この点だけでも、患者が禁煙するのを手助けする努力を払うことの十分な根拠となる。

教訓 手術のため禁煙してもニコチン離脱症状はほとんどありません。禁煙期間が長いほど、転帰は改善しますが、短期間の禁煙でも効果はあります。


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