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重症患者の栄養ガイドライン③ [critical care]

Guidelines for the provision and assessment of nutrition support therapy in the adult critically ill patient: Society of Critical Care Medicine and American Society for Parenteral and Enteral Nutrition: Executive Summary.

Critical Care Medicine 2009年5月号より

呼吸不全
1. 二酸化炭素産生量を減らし、呼吸商を小さくすることを企図した高脂質低糖質の特殊製剤を、急性呼吸不全を呈するICU患者全員にルーチーン使用することは推奨されない(Grade E)(適切な栄養剤の選択第2項の記述と混同しないこと)。
2. 急性呼吸不全の患者には、水分投与量を減らすために単位容量あたりの熱量が多い製剤の使用を考慮する(Grade E)。
3. 血清リンを厳重に監視する。低下していれば補充する(Grade E)。

腎不全
1. 急性腎不全または急性腎傷害を呈するICU患者には標準的な経腸栄養製剤を用いる。タンパクおよび熱量投与量もICUにおける標準的方法と同じでよい。重篤な電解質異常がある場合または発生した場合は、腎不全専用の特殊製剤(電解質組成が腎不全患者に適している)の使用を考慮する(Grade E)。
2. 血液透析または持続的腎代替療法中の患者には、タンパク投与量を最大2.5g/kg/dayまで増やす。腎機能低下がある患者に対し、透析を避けるまたは透析開始を遅らせることを目的としてタンパク投与量を減らしてはならない(Grade C)。

肝不全
1. 肝硬変および肝不全の患者に一般的な栄養評価法を適用する際は慎重を期する。肝硬変および肝不全患者では、腹水、血管内容量減少、浮腫、門脈圧亢進、低アルブミン血症などの合併症のため、一般的な方法は不正確で信頼性に欠ける(Grade E)。
2. 急性and/or慢性肝疾患のあるICU患者では、経腸栄養の実施が望ましい。肝不全患者ではタンパク投与量を制限してはならない(Grade E)。
3. 急性および慢性肝疾患のあるICU患者には、標準的な経腸栄養製剤を投与する。分岐鎖アミノ酸製剤は、難吸収性抗菌薬およびラクチュロースの経口投与による標準的治療を行っても改善しない肝性脳症患者にのみ投与する。

急性膵炎
1. 急性膵炎の症例では入院時に重症度を評価する(Grade E)。重症急性膵炎患者には鼻から経腸栄養チューブを留置し、輸液療法を行い血管内容量が回復したら可及的速やかに経腸栄養を開始する(Grade C)。
2. 軽症から中等度の急性膵炎の患者には栄養補助療法を実施する必要はない(予期せぬ合併症が発生した場合および経口摂取を7日以内に開始できない場合を除く)(Grade C)。
3. 重症急性膵炎では、胃もしくは空腸から栄養剤を投与してよい(Grade C)。
4. 重症急性膵炎患者の経腸栄養を順調に行うには、以下のような策を講ずる:
 入院後早期に経腸栄養を開始し、イレウスの期間をできるだけ短くする(Grade D)。
 経腸栄養投与部位をできるだけ遠位にする(Grade C)。
 経腸栄養製剤を、タンパク質でなく低分子ペプチドを含むものに、長鎖脂肪酸でなく中鎖トリグリセライドを含むものもしくは脂肪を含まないものに変更する(Grade E)。ボーラス投与でなく持続投与にする(Grade C)。
5. 重症急性膵炎で経腸栄養を実施できない場合は、経静脈栄養を考慮する(Grade C)。入院後5日目以内に経静脈栄養を開始してはならない(Grade E)。


終末期における栄養療法
1. 見込みのない患者に対するケアまたは終末期において、特別な栄養療法を実施する必要はない。栄養療法を実施するか否かを決定するには、患者/家族との十分なコミュニケーション、現実的な目標設定、および患者の自己決定権の尊重が必須である(Grade E)。

教訓 肝不全患者には標準的な経腸栄養製剤を投与します。分岐鎖アミノ酸製剤は、難吸収性抗菌薬およびラクチュロースの経口投与による標準的治療を行っても改善しない肝性脳症患者に限って投与します。重症急性膵炎では、胃もしくは空腸から栄養剤を投与してもかまいません。


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