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PTSDになりやすい人 [anesthesiology]

Operating Room Desensitization as a Novel Treatment for Post-Traumatic Stress Disorder after Intraoperative Awareness

Anesthesiology 2008年11月号より

腰椎前方固定術の全身麻酔中に術中覚醒し、術後にPTSDを発症した患者(49歳女性)に、手術室内でin vivoの曝露療法を行い脱感作したという症例報告。全身麻酔は、AO-propofol-remifentanilで維持した。術中に末梢静脈路が閉塞し、確保し直した。この間、麻酔薬は投与されていなかった。

術中覚醒の発生頻度
高リスク手術(心臓、外傷、緊急帝切など)では1000例につき1例

術中覚醒を原因とするPTSDの発生頻度
前向き研究0-44%、後ろ向き研究2-56%

PTSDの治療法
認知行動療法(不適切な認知的習慣や非合理的な信念を、適切・合理的なものに変容させる)、曝露療法(フラッディング[flooding;洪水みたいな]曝露と段階的曝露;外傷体験を実際に追体験または想像上で想起させ、恐怖や不安に慣れさせる)、眼球運動による脱感作/再処理療法(EMDR;セラピストが指を左右に動かすのを目で追いながら、外傷体験を想起する)、抗うつ薬

術中覚醒によるPTSDの危険因子
Psychological consequences of awareness and their treatment. Best Pract Res Clin Anaesthesiol 2007; 21:357-67
女性、中年、独身、教育水準が低い、重症外傷、精神疾患の既往、ボーダーライン人格障害

PTSDの原因となり得るような、苦痛、嫌悪、恐怖、不安をもたらす体験をしても、それを適切に言語化し、合理的に受け止めることができる記憶に書き換えることができる人はPTSDにはなりにくいようです。嫌な記憶を書き換えることが苦手な人(例;女性、中年、独身、教育水準が低い、精神疾患、BPD)はPTSDになりやすい。書き換えることが困難な記憶を残すような圧倒的経験(例;重症外傷)をするとPTSDになりやすい。

自然災害(大地震など)の場合、アメリカ人の方が日本人よりもPTSDになりやすい、と聞いたことがあります。術中覚醒関連の訴訟件数の日米差は、こんなところに起因しているのかもしれません。
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