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重症敗血症にHESはよくない~はじめに [critical care]

Renal effects of synthetic colloids and crystalloids in patients with severe sepsis: A prospective sequential comparison

Critical Care Medicine 2011年6月号より

近年、メタ分析および臨床試験で輸液蘇生時に用いる製剤が膠質液であっても晶質液であっても生存率には差がないことが明らかになってきた。輸液製剤の選択はそれほど重要な問題ではないと目され、敗血症管理のガイドラインでは使用する製剤の決定は各人の自由に任されている。ハイドロキシエチルデンプン(HES)は現在最も頻用されている膠質液である。次にゼラチン製剤、ヒトアルブミン製剤、デキストラン製剤と続く。

デンプン製剤は腎不全を引き起こし死亡率を上昇させる可能性があることを示すエビデンスが続々と発表されているが、「第三世代の新しい」デンプン製剤は低分子量なので(HES 130/0.4)、集中治療領域でも安全に使用することができると唱道されている。FDAは血管内容量不足の治療および予防を目的とする6%HES 130/0.4の使用を2007年に認可した。

しかし、最近発表された複数の体系的総説では、低分子量デンプン製剤が過去のデンプン製剤よりも副作用が少ないという主張を裏付ける根拠は不足しており、ICUまたは敗血症患者におけるHES 130/0.4の安全性については探索的試験が一編発表されているだけにとどまっている。

我々はこのような状況を踏まえ、ICU、救急部および手術室における6%HES 130/0.4の使用を中止し4%ゼラチン製剤に変更した。意外にも、腎代替療法実施率は変更前と変わらず36%であった。さらに、合成膠質液は量依存性に腎不全発生率を上昇させることが分かった。

ゼラチン製剤は腎毒性が少ないと考えられているが、これとて重症敗血症患者や腎移植患者において旧世代のHES製剤の対照としてゼラチン製剤を使用し比較した試験の結果を引いて言い伝えられているに過ぎない。ゼラチン製剤の有効性や安全性を裏付ける無作為化比較対照試験はない。

今回我々は、三つの異なる治療法をそれぞれの期間を決めて連続的に行い重症敗血症患者の臨床転帰を検討した。最初に、合成膠質液+晶質液の期間、次にゼラチン製剤+晶質液の期間と続き、最後に晶質液のみの期間というように設定した。輸液以外については、重症敗血症の治療方針は全期間を通じて同一であった。

教訓 デンプン製剤は腎不全を引き起こし死亡率を上昇させる可能性が示されていますが、「第三世代の新しい」デンプン製剤は低分子量なので(HES 130/0.4)、集中治療領域でも安全に使用することができると言われています。

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