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重症患者における経静脈栄養の開始時期:早期vs 晩期~方法② [critical care]

Early versus Late Parenteral Nutrition in Critically Ill Adults

NEJM Online First 2011年6月29日

データ収集

基準時点における人口統計学的特性および臨床特性について、両群間に差はなかった(Table 1およびSupplementary Appendix のTable1)。APACHEⅡスコアを用いて重症度を数値化して評価した(0点~71点、得点が高いほど重症であることを示す。)敗血症の診断には、American College of Chest Physicians-Society of Critical Care Medicineの基準を適用した。臓器不全および敗血症のスコア算出は、熟練した専門医が担当した。

ICUにおける治療内容、実施した手技、新規の細菌または真菌感染、血液および尿生化学検査・血算・炎症マーカの結果は、すべて毎日記録した。経腸栄養および経静脈栄養それぞれによって投与された一日の熱量、経腸栄養中止の有無および栄養投与に伴う合併症についても毎日記録した。また、退院前における身体機能の定量評価を可能な限り行った。患者に対する請求書から直接医療費を求め、保健医療費支払い者の観点からその分析を行った。政府負担分と患者負担分は合計した。全ベルギー国民を対象としたベルギー全国登録簿を利用し、無作為化割り当て90日後における対象患者の生死を確認した。

転帰項目

安全性評価項目

安全性に関する評価項目は、生死(8日以内にICUを退室した患者のうち生存者の占める割合、ICU死亡率、院内死亡率、90日後生存率[入院中、退院済み、ICU在室中、ICU退室済みなどを問わない])、合併症発生率および低血糖発生率とした。ブドウ糖の経静脈投与を行っていても繰り返す低血糖が割り当てた栄養療法の実施期間中に発生した場合を重篤な有害事象とした。

主要有効性評価項目

有効性に関する主要評価項目は集中治療を要した期間とした。ICU在室日数(生存、死亡を問わない)およびICU生存退室までの期間を指標とした。一般病棟の空床の有無によってICU退室までの期間に影響が及ぶ可能性があるため、ICU退室が可能な状態になるまでの期間をICU退室までの期間とした。予め設定した客観的基準に照らして、退室可能かどうかを判断した(Table 2)。

副次有効性評価項目

副次評価項目は以下の通りである;新規の感染を発症した患者数、感染部位(気道または肺、血流、尿路、創部のいずれか)、抗菌薬投与期間、炎症(CRP最高値を指標とした)、人工呼吸器離脱完了までの期間、気管切開の有無、予期せぬAKIの発生率(RIFLE基準で判断、入室時と比べ血中クレアチニン濃度が2倍以上に上昇した症例の占める割合)、腎代替療法が実施された患者の割合およびICUにおける実施期間、血行動態の薬理学的または機械的補助の有無および期間。割り当てた栄養投与法の実施期間中および全ICU在室期間中に肝機能障害を呈した患者の割合について、経静脈栄養早期開始群と晩期開始群とのあいだで比較した。肝機能障害の定義は、総ビリルビン>3.0mg/dL、γGTP>79.5U/L、ALP>405U/L、ALT>123U/LまたはAST>114U/Lのいずれかの所見が見られた場合とした。入院期間についても両群間で比較した。退院に先立ち、身体機能の定量評価を行った。内訳は、6分間歩行距離の計測と何ら介助を要することなく日常生活を送ることができる患者の割合である。無作為化割り当てから退院時までにかかった総医療費についても比較した。

統計解析

検出力80%以上で両群間のICU滞在日数に一日の差があることを検出し、検出力70%以上でICU死亡率に3%の差があることを検出するのに必要な標本数を算出した。すべての解析をITT解析で行った。データの比較にあたっては、χ二乗検定、t検定またはノンパラメトリック検定(中央値検定、Wilcoxon順位和検定またはMann-Whitney U検定)のいずれかを適用した。事象発生までの時間の解析にはKaplan-Meier法を用いた。(略)

高リスク患者については予め設定したサブグループ解析を行った。サブグループ解析の対象は、BMI25未満または40以上、NRS 5点以上、心臓手術の既往、入室時敗血症発症のいずれかに該当する患者である。(略)

参考記事:重症患者の栄養ガイドライン①

教訓 ICU死亡率、院内死亡率、90日後生存率、合併症発生率および低血糖発生率が安全性についての評価項目として用いられました。有効性についての評価項目は、集中治療を要した日数です。
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