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重症患者における経静脈栄養の開始時期:早期vs 晩期~結果 [critical care]

Early versus Late Parenteral Nutrition in Critically Ill Adults

NEJM Online First 2011年6月29日

結果

実施状況

計4640名が無作為化割り当ての対象になり、解析が行われた(Fig. 1)。プロトコルに従って実際に行われた栄養療法の詳細についてはFigure 2に示した(Supplementary Appendix のFig. 1も参照のこと)。経静脈栄養晩期開始群では、目標血糖値を達成するのに要したインスリン投与量の中央値は31単位/day(四分位範囲19~48単位/day)であった。平均血糖値は102±14mg/dLであった。一方、早期開始群のインスリン投与量中央値は58単位/day(四分位範囲40~85単位/day)で、平均血糖値は107±18mg/dLであった(インスリン投与量、平均血糖値ともP<0.001)。血清中カリウム、リンおよびマグネシウム濃度は、両群同等であった。

安全性評価項目

ICU死亡率、院内死亡率および90日後死亡率は両群同等であった(Table 2およびSupplementary Appendix のFig. 2)。しかし、晩期開始群の方が低血糖を呈した患者が多かったにも関わらず、8日以内にICUを生存退室した患者の占める割合は晩期開始群の方が大きかった。栄養療法に関連する合併症の発生率は両群同等で、割り当てた栄養法に起因する重篤な有害事象は見られなかった。

主要評価項目

経静脈栄養早期開始群と比べ晩期開始群の方がICU在室日数中央値が一日短く、ICU生存退室の相対的可能性が6.3%高かった(ハザード比1.06; 95%信頼区間, 1.00―1.13; P=0.04)(Table 2およびFig. 3)。低血糖についての調整を行った後の効果量も同様であった(ICU生存退室の可能性6.9%上昇)。

副次評価項目

経静脈栄養早期開始群と比べ晩期開始群の方がICU在室中の新規感染症(肺、血流または創部)の発生が少なかったが、急性炎症反応の程度は早期開始群より顕著であった(Table 2)。人工呼吸期間および腎代替療法実施期間は、晩期開始群の方が短かった。早期開始群と比べ晩期開始群の方が、高ビリルビン血症(>3mg/dL)を呈した患者が多く、γGTPおよびALPについては臨床的に注意を要するレベルの上昇を呈した患者が少なかった。AST/ALTが大幅に上昇した患者の数は両群同等であった(Supplementary Appendix のTable 5)。

経静脈栄養早期開始群と比べ晩期開始群の方が入院期間中央値が2日短く、早期退院の相対的可能性が6.4%高かった(ハザード比1.06; 95%信頼区間, 1.00-1.13; P=0.04)(Table 2)。身体機能(退院直前における6分間歩行距離および日常生活自立度)は両群同等であった。経静脈栄養晩期開始群は早期開始群よりも、患者一人当たりの総医療費が平均1110ユーロ(約1600米ドル)少なかった。

サブグループ解析

予め設定したサブグループについての解析では、主要評価項目、安全性評価項目ともに特異的な傾向は見られなかった(Supplementary Appendix のTable 6)。早期の経腸栄養が外科的に禁忌であった患者について事後サブグループ解析を行い、経静脈栄養晩期開始群と早期開始群とを比較した(肺、食道、腹腔内または骨盤内の複雑手術を受けた患者517名、APACHEⅡスコア27±11点)。予想に違わず、この高リスクサブグループにおける第7日までの経腸栄養投与カロリー中央値は0kcal/day(四分位範囲0-163kcal/day)であった。この患者群では、経静脈栄養晩期開始群の方が早期開始群よりも感染発生率が低かった(29.9% vs 40.2%, P=0.01)。晩期開始群ではICU早期生存退室の相対的可能性が20%高かった(ハザード比1.20; 95%信頼区間, 1.00-1.44; P=0.05; 交互作用のP値=0.11)(Supplementary Appendix のTable 6)。

参考記事:重症患者の栄養ガイドライン①

教訓 ICU死亡率、院内死亡率および90日後死亡率は同等でした。晩期開始群では、低血糖発生数が多かったにも関わらず、8日以内にICUを生存退室した患者の割合は早期開始群を上回っていました。ICU在室日数も晩期群の方が短いという結果が得られました。新規の感染は晩期群の方が少なかった一方で、炎症反応は早期群の方が軽度でした。
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