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術後肺合併症による医療・経済負担と予防策~一般的予防策 [critical care]

Clinical and economic burden of postoperative pulmonary complications: Patient safety summit on definition, risk-reducing interventions, and preventive strategies

Critical Care Medicine 2011年9月号より

術後肺合併症の予防と起こったときの対処法

これまでに縷々述べたとおり、術後肺合併症は重大ではあるが予防の対象となる可能性を秘めた合併症であり、減らすことができれば周術期管理におけるコスト削減につながる。一例を挙げると、誤嚥の予防および微量誤嚥に対する有効な対処を行えば術後肺炎のリスクが低減し、転帰が改善することが分かっている。

術後肺合併症予防における一般的な周術期対策

術後肺合併症については、今までにいくつもの周術期予防策が提唱されている。例を挙げると、術前禁煙や栄養補助療法、そして呼吸筋訓練、自発的呼吸訓練器具(トリフローなど)の使用もしくは呼吸理学療法による呼吸リハビリなどである。呼吸器外科の大手術を予定されている患者では、吸気および呼気訓練を行うと術後の無気肺を防ぐことができるとされている。術後に人工呼吸管理が行われている場合、術後肺合併症のリスクを低減するために取りうる術後対策は、呼吸理学療法、間欠的陽圧換気、間欠的吸痰、気管支拡張薬の投与、PEEPの付加、粘液溶解薬の吸入などである。以上のような個々の対策は併用されることが多い。しかし、こういった方法の一つ一つには術後肺合併症の予防効果はほとんどないという結果を示した研究も報告されている。例えば、開胸肺葉切除が行われた患者を対象とした最近の研究では、呼吸理学療法には術後肺合併症を減らす効果がないことが分かった。別の研究では、人工呼吸管理が行われている重症患者に呼吸理学療法を行うと、かえって人工呼吸期間が延長することが明らかにされている。だが、他の複数の研究では呼吸理学療法によって人工呼吸器離脱率、ICU滞在期間および死亡率の改善がもたらされることが示されている。

周術期予防策を包括的に行うことによってより大きな効果が得られる可能性がある。

術後肺合併症予防策についての2年間にわたるパイロット研究が実施され、医師およびスタッフの教育、自発的呼吸訓練器具の術後使用、口腔内クロルヘキシジン消毒、早期離床および臥床時頭高位といった取り組みを総合的に行ったところ、術後肺炎の発生頻度が0.76%から0.18%へと81%もの有意な低下が得られることが分かった。周術期に行われている慣習を止めることによっても術後肺合併症のリスクが低減する可能性がある。例えば、オピオイドを投与すると呼気終末肺容量および酸素飽和度が低下する。また、胃内容の排出のために胃管がルーチーンで挿入されるものだが、胃管は微量誤嚥を起こりやすくする。

教訓 一般的な予防策の中には効果がないものもあるようです。口腔内衛生、呼吸訓練、早期離床および頭部挙上のすべてを組み合わせて実施すると、術後肺炎の発生率が大幅に低下します。


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