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重症感染小児は輸液負荷で死亡率が上昇する~方法 [critical care]

Mortality after Fluid Bolus in African Children with Severe Infection

NEJM online 2011年5月26日

方法

設計と治療プロトコル
ケニヤ(一施設)、タンザニア(一施設)およびウガンダ(四施設)の計6施設において、多施設オープンラベル無作為化二層比較対照試験を行った。A層では、高度低血圧ではない患児を登録した。高度低血圧(月齢12ヶ月未満では収縮期血圧50mmHg未満、1~5歳では収縮期血圧60mmHg未満、5歳以上では収縮期血圧70mmHg未満)を呈する患児はB層に登録した。A層の患児は、0.9%食塩水20mL/kgを1時間かけて経静脈投与する群(生食ボーラス群)、5%アルブミン溶液20mL/kgを1時間かけて経静脈投与する群(アルブミンボーラス群)またはボーラス輸液をしない群(対照群)のいずれかに1:1:1の比率で無作為に割り当てた。B層の患児は、5%アルブミン溶液40mL/kgもしくは生理的食塩水40mL/kgのいずれかの群に無作為に割り当てた。A、Bいずれの層においても、生食ボーラス群またはアルブミン群に割り当てられた症例では、決められた輸液負荷を終了しても依然として末梢循環が不良である場合(下記に詳述)には、同一製剤20mL/kgを追加でボーラス投与した。対照群では末梢循環が不良であっても輸液負荷は行わなかった。高度低血圧が進行した場合には、割り当てられた輸液製剤(対照群では生理的食塩水)を40mL/kgボーラス投与した。生食もしくはアルブミンボーラス投与群に割り当てられた症例では、使用する輸液製剤の変更(生食群の症例にアルブミンを投与するなどの変更)は禁止された。米国や欧州のガイドラインと比べると本研究で定めたボーラス投与量は少なめである。なぜなら、集中治療が可能な施設が少ない状況で治療を受けている患児が肺水腫に陥った場合のリスクを懸念したからである。2010年6月にプロトコルを修正し、初回ボーラス量を40mL/kgとした(B層では60mL/kg)。研究プロトコルについての詳細はNEJM.org上に掲載した。

進行状況の監視
中間解析の結果を、データ・安全性監視独立委員会が年二回検討した。研究の中止または修正勧告の是非を考慮するにあたっては、Haybittle-Peto基準による統計学的検討を行った。2011年1月12日に実施された第五回中間解析では、データ・安全性監視独立委員会により患児2995名のデータが検討された結果、生食ボーラス群およびアルブミンボーラス群についての安全性の懸念が生じたことと、ボーラス群が対照群より有効であることが示される可能性が非常に低いと判断されたため、研究の中止が勧告された。

資金提供団体の役割
本研究には英国医学研究協議会が資金を提供し、バクスター社が5%アルブミン製剤と0.9%食塩水製剤を寄付した。両団体およびインペリアルカレッジロンドンのいずれもが、本研究の法的責任は負わず、研究設計、データ収集、解析およびデータの解釈、論文作成には一切の関わりを持たなかった。

対象集団
日齢60日から12歳までで、意識障害(虚脱状態や昏睡)または呼吸窮迫(呼吸仕事量増大)のいずれかもしくは両者に加え、末梢循環不全(以下のいずれかを一つ以上満たす場合:毛細血管再充満時間3秒以上、両下肢の温度差、橈骨動脈容積脈波微弱または高度頻脈[月齢12ヶ月未満 180bpm以上、1~5歳 160bpm以上、5歳以上 140bpm以上])を(Fig. 1)が認められる患児を対象とした。除外基準は、高度栄養不良、胃腸炎、感染以外の原因によるショック(例;外傷、手術、熱傷など)および輸液負荷が禁忌の場合とした。

評価項目
主要評価項目は無作為化割り当て48時間後の死亡率とした。副次評価項目は、4週間後死亡率、4および24週間後神経学的後遺症、無作為化割り当て48時間後までのショック、輸液負荷によるものと考えられる有害事象(肺水腫、頭蓋内圧上昇および重症アレルギー反応)とした。治療群の割り当てを関知しない人員で構成される評価項目検討委員会が、死亡、神経学的後遺症および有害事象のあった全例を検討した。

無作為化割り当て
研究実施施設ごとに層別化して無作為化割り当てを実施しした。

介入手順
対象患児は小児科一般病棟で治療を受けた。いずれの病棟も、短時間のバッグマスク換気以外の補助呼吸を行うことはできない環境であった。重症度判断および管理法が適切に行われ、プロトコル遵守が徹底されるように、参加スタッフには研究の全期間を通じてトリアージと小児救急蘇生処置の訓練が行われた。救急医療と、酸素飽和度および血圧の監視が円滑に行われるように、基本的な医療器材が提供された。血圧は自動血圧計で測定した。いずれの患児に対しても必要に応じて、維持輸液(2.5~4.0mL/kg/hr)、抗菌薬、抗マラリア薬、解熱薬および抗痙攣薬、低血糖の補正(血糖値45mg/dL未満のとき)が行われ、ヘモグロビン濃度5g/dL未満のときには20mL/kgの全血輸血を4時間かけて実施した。

入院時、1時間後、4時間後、8時間後、24時間後および48時間後に、共通の臨床症例報告用紙に患者情報を記入した。血管内容量不足の有無、神経学的所見、循環動態および有害事象(肺水腫、頭蓋内圧上昇およびアレルギー反応)の有無が記録された。有害事象は発生から2日以内にキリフィ県(ケニヤ)に所在する臨床試験施設に報告され、訪問監視員が報告書と照らし合わせて確認した。無作為化割り当て4週間後に、神経学的後遺症の評価を行った。この時点で神経学的後遺症があった患児については、割り当て24週間後に再評価を行った。

教訓 対象は、日齢60日から12歳までで、意識障害and/or頻呼吸に加え末梢循環不全が認められる患児です。高度栄養不良、胃腸炎、感染以外の原因によるショックおよび輸液負荷の場合は除外されました。対象患児は、生食負荷群、アルブミン負荷群、輸液負荷なし群のいずれかに1:1:1の比率で無作為に割り当てられました。主要エンドポイントは48時間後死亡率です。

参考記事
輸液動態学 
正しい周術期輸液 
敗血症性ショック:輸液量が多いほど死亡率が高い 
外傷患者救急搬送中の輸液で死亡率が上昇する
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