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敗血症性ショック:輸液量が多いほど死亡率が高い~はじめに [critical care]

Fluid resuscitation in septic shock: A positive fluid balance and elevated central venous pressure are associated with increased mortality

Critical Care Medicine 2011年2月号より

敗血症性ショックは極めて複雑な病態を呈する。敗血症を起こす引き金となった感染、それに対する宿主の反応、そして医学的介入の三者が織りなす相互作用の結果、生理機能が乱調に陥る。敗血症性ショックで見られる分子レベルでの事象について胸躍るような新しい発見が相次いでいるものの、治療の基本についてはまだまだ研究が進んでいない部分が残されている。輸液、抗菌薬、感染源の制御、昇圧薬、強心薬および人工呼吸は、敗血症性ショックの早期管理における重要な根本要素である。現時点における敗血症性ショックの死亡率はおよそ40%にものぼる有様であるのに、輸液負荷における投与量は大抵が勘に頼って決められているという驚くべき事実がある。輸液量が少なすぎれば組織低灌流が発生し、臓器機能が一層低下することになる。一方、輸液量が多すぎても、それ相応のリスクが伴う。2006年に発表された敗血症性患者を対象としたヨーロッパからの報告によれば、水分出納がプラスになると死亡率が上昇する。また、急性肺傷害患者を対象とした大規模無作為化研究では、水分出納がプラスになると人工呼吸期間が延長し、死亡率が上昇する傾向が認められることが明らかにされている。2008年のSurviving Sepsisガイドラインでは、中心静脈圧が8-12mmHgに達するまで輸液を行い、心室充満不良/人工呼吸中の場合は目標値を12-15mmHgに上方修正することと、とされている。しかし、輸液速度を落としたり、積極的な輸液を止めたりするタイミングについては、何ら勧告はない。

我々は、敗血症性ショック患者に対する輸液療法にはまだ不明な点があることを踏まえ、VASST研究(VAsopressin in Septic Shock Trial)の対象患者778名について遡及的調査を行った。対象は全員が敗血症性ショック患者であり、ノルアドレナリンを少なくとも5mcg/min投与された。年齢、重症度による調整を行った上で、治療開始当初12時間およびその後の4日間の水分出納がプラスであると28日後死亡率が上昇するかどうかを検討した。大半の担当医は、輸液量を決定する際に患者の中心静脈圧をある程度参考にしていた。したがって、中心静脈圧が治療開始当初12時間およびその後の4日間の水分出納と相関しているかどうかについても検討した。年齢および重症度についての調整を行った後に、中心静脈圧の値によって患者を以下のように層別化した。具体的には、Surviving Sepsisガイドラインに従い、中心静脈圧が推奨値の範囲内である群(8-12mmHg)、8mmHg未満の群、12mmHgを超える群の三つに分け、ガイドライン通りの8-12mmHgの群が他の群より生存率が高いかどうかを解析した。

参考記事
輸液動態学 
正しい周術期輸液  
外傷患者救急搬送中の輸液で死亡率が上昇する
重症感染小児は輸液負荷で死亡率が上昇する

教訓 ALIでは制限輸液(I&Oバランスがゼロ~ややマイナス)の方が大量輸液よりも人工呼吸期間が短縮することが明らかにされています(Comparison of Two Fluid-Management Strategies in Acute Lung Injury)。Surviving Sepsis Campaignでは、CVP8~12mmHgを目標とした積極的な輸液が推奨されています。本研究では、この輸液療法によって本当に転帰が改善するのかどうかが検証されました。
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