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ペースメーカ/ICD患者の周術期管理~術中管理① [anesthesiology]

Practice Advisory for the Perioperative Management of Patients with Cardiac Implantable Electronic Devices: Pacemakers and Implantable Cardioverter-Defibrillators: An Updated Report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Perioperative Management of Patients with Cardiac Implantable Electronic Devices

Anesthesiology 2011年2月号より

Ⅲ. 術中管理

CIEDの術中管理の枢要は以下の通りである:
(1) 作動状況の監視
(2) 故障や誤作動の予防
(3) 緊急時における除細動、カルディオバージョンまたはペーシングの実施

術中モニタリング

術中は、心電図の持続監視および脈拍の監視(脈拍の触知、心音の聴診、動脈圧波形、ドプラ超音波、パルスオキシメトリ波形など)を行う。CIED患者における心電図または末梢脈拍の監視による臨床的効果を検討した比較対照試験は行われていない。しかし、ペースメーカまたは心機能に異常があることを検出するのに術中の心電図モニタリングが重要であることが症例報告で指摘されている。

術中モニタリングについての勧告

心電図および脈拍の監視はCIED患者の術中管理において重要な位置を占めている。ASAの術中管理基準で定められているのと同様に、麻酔開始から手術室退室までの間、患者の心電図は常に画面上に表示されていなければならない。患者の状態によっては術後も心電図モニタリングを継続する。全身麻酔、局所麻酔、鎮静または監視下鎮静管理(MAC)のいずれを実施するにせよ、CIED患者には全例で心電図モニタリングを実施しなければならない。脈拍の持続監視も、全身麻酔、局所麻酔、鎮静または監視下鎮静管理(MAC)のいずれであっても全例で実施する。手術に使用する機器とCIEDとの予想外の相互干渉が生じた場合には、手術を中断し干渉の原因を除去または是正することを検討する。

電磁妨害の原因の管理

電気メスやラジオ波焼灼を用いる手術、体外衝撃波砕石術、MRIまたは放射線治療の際には、CIEDに故障が生じたり、CIEDの機能が干渉されたりして、重篤な有害転帰に至る可能性がある。各手術/各検査において、電磁妨害の発生原因は特定の単独機器であることが多い。電磁妨害を起こす可能性のある各機器の管理については以下にそれぞれまとめた。

電気メス

電気メスによる電磁妨害防止は以下のように行う。
(1) メス本体と対極板の位置に気をつける。すなわち、電流がCIEDの電気刺激発生器(ジェネレータ)または導線(リード)そのものや付近を通らないようにする。
(2) 電気メスの電場がジェネレータまたはリードに近づかないようにする。
(3) できる限り低出力で間欠的かつ不規則な短時間の作動とする。
(4) 可能であればバイポーラ電気メスまたは超音波メス(ハーモニック)を使用する。

CIEDのジェネレータやリードから離れた場所を電気メスなどの電流が通るように機器を設置すると電磁妨害の発生を防ぐことができるかどうかを評価した文献はほとんどない。

症例報告二編および観測研究一編では、対極板をジェネレータおよびリードからできる限り離れた場所に貼付しても電磁妨害が起こる可能性があることが指摘されている。症例報告一編では、モノポーラ電気メスを胸骨に使用したところ、ペースメーカの作動が完全に停止したと報告されている。

電気メスをできる限り低出力で間欠的かつ不規則な短時間の使用にとどめることの有効性を検証した研究は最近は発表されていないが、過去の文献によれば、このような電気メスの使用法によって、あきらかな電磁妨害の発生を見ることなく手術を完遂することができるとされている。電気メスの一回一回の作動が短時間であってもペースメーカの作動不良が起こったという症例報告が一編発表されている。

ペースメーカ患者に対しバイポーラ電気メスまたはハーモニックスカルペルを使用すると円滑に手術を行うことができるという症例報告が複数存在する。しかし一方で、バイポーラ電気メスを使用してもメースメーカの作動不良が起こったという症例報告が一編発表されている。

電気メスによる電磁妨害の防止についての勧告

本特別委員会では、術中管理に各術式に応じた色々な工夫を講ずることによって電磁妨害の発生を抑止することができると考える。電気メス装置によるペースメーカに対する干渉のリスクを制御する方法は次の通りである。(1)電流がCIED装置そのものや付近を通らないように電気メスの部品および対極板を設置する。(2) 電気メスの電場がジェネレータやリードに接近しないようにする。作動中のメス先電極が操作中にジェネレータの上を通過しないように注意する。(3) できる限り低出力で間欠的かつ不規則な短時間の使用にとどめる。
(4) 可能であればバイポーラ電気メスまたは超音波メス(ハーモニック)を使用する。術者に以上のような注意点があることを指摘または再確認する。

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