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敗血症:治療の進歩と免疫異常のポイント⑦ [critical care]

Advances in the Management of Sepsis and the Understanding of Key Immunologic Defects

Anesthesiology 2011年12月号より

治療法の進歩:抗菌薬療法

感染症専門家と集中治療専門家が協働し指導力を発揮して敗血症の治療指針が作成され、Surviving Sepsis Campaignと銘打ったガイドラインにまとめられた。その概略をtable 1にまとめた。「敗血症セット治療(sepsis bundles)」を早い段階から適用し、決められた治療法を漏れなく実施すれば、生存率が有意に改善することが数多くの研究で明らかにされている。敗血症の治療を成功させる二つの鍵は、感染源の迅速な制御と、血行動態の速やかな安定化による臓器血流回復・維持である。感染源の除去または縮小のための介入(外科的ドレナージなど)が必要であれば、遅滞なく実施しなければならない。生存率を改善するには、直ちに抗菌薬を投与することが非常に重要である。敗血症性ショック患者を対象とした有名な研究では、適切な抗菌薬投与の開始が一時間遅れるごとに死亡率が7.6%ずつ上昇することが示されている。

抗菌薬の予測的選択の成否も重要なポイントである。起因菌に対する抗菌活性のある抗菌薬が選択されなかった場合は転帰が不良で、入院期間が延長したり死亡率が上昇したりすることが明らかにされているからである。感染源から起因菌を予測するだけでなく、薬剤耐性菌の宿主危険因子についても配慮しなければならない。例えば、多剤耐性菌定着歴や比較的最近の抗菌薬使用歴などが宿主危険因子である。市中感染と院内感染とのあいだには違いがあり、一般的には院内感染では耐性菌(MRSAや緑膿菌など)が起因菌であることが多いため、両者を区別することが重要である。さらに、医療関連感染の危険因子についても評価しなければならない。居住場所が老人ホームや長期療養施設であるとか、近い過去の入院歴、透析クリニックへの通院、点滴外来での化学療法や抗菌薬投与、在宅医療(経静脈投与、創傷ケアまたは専門的な看護ケアなど)はいずれも耐性菌感染の危険因子となり得る。このような危険因子を保有する患者の起因菌は院内感染の起因菌と類似していることが多い。不適切な抗菌薬投与の原因として頻度が高いのが、医療関連感染の危険因子の有無についての認識不足である。抗菌薬が適切に選択されなければ、転帰は悪化する。この理路は肺炎についてもっともよく当てはまることが証明されているが、一筋縄ではいかない状態に陥った腹腔内感染やカテーテル関連血流感染などの他の部位の感染を治療する際にも念頭に置くべきである。

教訓 敗血症性ショック症例では、適切な抗菌薬投与の開始が一時間遅れるごとに死亡率は7.6%ずつ上昇します。院内感染や医療関連感染では耐性菌の存在を考慮して抗菌薬を選択します。
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