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敗血症:治療の進歩と免疫異常のポイント⑭ [critical care]

Advances in the Management of Sepsis and the Understanding of Key Immunologic Defects

Anesthesiology 2011年12月号より

敗血症患者の麻酔管理

敗血症患者の治療に関連して前項までに紹介した原則の大半は、敗血症患者の周術期管理にもそのまま適用することができる。したがって、敗血症患者の麻酔管理についてはいくつかの点についてのみ手短に述べることにする。敗血症患者の管理においていかなる時も何よりも優先しなければならないのは、蘇生のABCである。まず、手術室へ安全に搬送できる程度に患者の状態が落ち着いているかどうかを確認する。まだ気管挿管が行われていない症例では、安全な搬送に少しでも不安があれば気道を確保しなければならない。中心静脈路が留置されていれば、輸液療法の指標となり得る中心静脈圧の測定、中心静脈血酸素飽和度の測定(Surviving Sepsis Campaign推奨)、ノルアドレナリンをはじめとする血管作動薬の投与などが可能である。多くの場合、中心静脈路が必要である。急速輸液に必要な大口径の末梢静脈路および一拍ごとの動脈圧測定に必要な動脈圧ラインも大半の症例では留置すべきである。ICUまたは救急部で抗菌薬が投与されていなければ、速やかに投与する。

麻酔薬の投与に先立ち、適切な輸液療法が行われ血管内容量が補正されていることを確認する。多くの麻酔薬は前負荷を減らし(静脈が拡張するため)、心筋収縮力を低下させand/or交感神経の緊張を低下させるので、麻酔導入中に動脈圧が急激に下がることがある。局所麻酔薬による脊髄クモ膜下麻酔または硬膜外麻酔も交感神経の緊張を激減するので、敗血症患者に実施すると高度低血圧を来すことになる。したがって、敗血症患者の腹部または胸部手術に対する麻酔法として選択されるのは、通常は全身麻酔である。敗血症患者では凝固系に異常があることが多いので、その場合には脊髄クモ膜下麻酔や硬膜外麻酔が禁忌であることも全身麻酔が選択される理由である。しかし、症例によっては区域麻酔が適応となることもある。数多くの基礎的研究で、麻酔薬が免疫反応を修飾させることが明らかにされているが、そうした研究の大半が、in vitro実験や動物モデル実験によるもので、臨床的にも当てはまるかどうかは分からない。現時点では、敗血症に対する宿主免疫反応の修飾作用という面からとりたてて推奨される薬剤はない。

敗血症になると胃内容が空虚になるのに時間がかかるようになり、誤嚥の危険性が増すため、敗血症患者はフルストマックであると考えなければならない。稀ではあるが術中に高血圧を呈する敗血症患者もいるが、この場合は短時間作用性の降圧薬を投与する。急激に低血圧に陥ることがあるからである。敗血症患者ではARDSなどの肺合併症が発生することが珍しくない。肺容量を維持し酸素化を改善するのにPEEPが有用である。

教訓 敗血症患者の麻酔では、安全な搬送、輸液とノルアドレナリン投与による血行動態の維持および抗菌薬投与が重要です。
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