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成人先天性心疾患患者の麻酔~麻酔管理の問題点③ [anesthesiology]

Anesthesia for Noncardiac Surgery in Adults with Congenital Heart Disease

Anesthesiology 2009年8月号より

心不全
未治療、治療後を問わず先天性心疾患には右心不全および左心不全が伴うことが多い。成人先天性心疾患患者では、心臓手術後無症状で長年経過してもなお、心房性ナトリウム利尿ペプチド、レニン、アルドステロン、ノルエピネフリンの上昇が認められる。自律神経による心臓調節の異常や、血行動態の変化が成人先天性心疾患患者の心不全の原因である。他のタイプの心不全と同じく、左室不全の治療には、利尿薬、ジゴキシン、ACE阻害薬およびβ遮断薬が用いられる。周術期には病態に合わせて投薬内容を調節する必要がある。左室不全と異なり、解剖学的右室がsystemic ventricleとして機能している患者(修正大血管転位、MustardまたはSenning手術後の大血管転位、単心室)における心不全の管理法については、エビデンスに基づくガイドラインは存在しない。今後の臨床試験が待たれる。

不整脈
成人先天性心疾患には心房性不整脈および心室性不整脈がつきものである。根治的または姑息的手術後に見られる不整脈には、元々ある心臓の欠陥による原発性のものと手術による続発性のものとがある。例えば、上室性不整脈は、心房の手術(心房中隔欠損閉鎖術、Mustard手術、Senning手術またはFontan手術)を受けた患者や、右房拡張のある患者では20-45%に認められる。頻脈性不整脈のうちもっとも頻度の高いタイプのものは、右房起源の心房内リエントリー性不整脈である。心房性の頻脈は抗不整脈薬抵抗性であることが多く、発生すれば急速に血行動態が悪化することがある。心室性不整脈は、右室または左室機能が相当低下した患者において認められることが多い。その他の危険因子は、心室切開術の既往、古い時代に行われた手術、初回手術時の年齢が高い、などである。長じてから手術を受けた患者は、長期にわたりチアノーゼ、容量負荷および圧負荷に曝されている。その結果、心筋の線維化が進行し伝導遅延が生じるため、不整脈のリスクが上昇する。肥大心筋の心内膜下心筋血流は低下しているため、これに加えて急性低酸素血症が起こると、心室性不整脈が発生する。術後に房室ブロックが生じ、徐脈の治療のため永久ペースメーカが必要になることがある。ペースメーカおよび植え込み型除細動器を装着している患者の管理については他の文献を参照のこと。

教訓 成人先天性心疾患患者には、心不全や不整脈がつきものです。

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