Acute Kidney Injury and Extrarenal Organ Dysfunction: New Concepts and Experimental Evidence
Anesthesiology 2012年5月号より
急性腎傷害(AKI)はICUに収容された重症患者の5%-20%に発生する。ICUでは、ほかの病態を併発していない単純なAKIのみの症例にお目にかかることは稀で、たいていの場合は敗血症や呼吸不全などの経過中にAKIが起こり、得てして多臓器不全に進展するものである。近年、腎代替療法が進歩を遂げているが、AKIを発症し多臓器不全に至った患者の死亡率はおよそ50%であり、依然として低下の兆しを見せていない。臨床研究で得られた最新の知見によれば、AKIは重症度の指標であるだけでなく、多臓器不全に先駆けて発生する病態であり、AKIが起こると死亡率の大幅な上昇につながることが明らかにされている。したがって、AKIが腎臓以外の臓器に特異的な影響を及ぼし多臓器不全を進展させたり増悪させたりする機序が解明されれば、AKI症例の死亡率を低下させる治療的介入の確立につながる可能性がある(fig. 1)。本レビューでは、多臓器不全を伴うAKIに関する臨床的知見と動物モデルを用いた腎傷害発生機序の解明に関する最近の成果について手短に検討、紹介する。
臨床におけるAKI
つい最近までAKIには統一された定義がなかったため、発生頻度や死亡率には大きなばらつきがあった。Acute Dialysis Initiative Group(ADQI)が2004年にRIFLE分類を提唱した。この分類は、血清クレアチニン濃度、糸球体漉過率もしくは尿量の変化を元にして「急性腎不全」患者の重症度を区分する統一した方法を示すことを狙いとして策定された。その後、Lassniggらによる前向き観測研究をはじめとする諸研究が行われ、わずか0.3mg/dLほどであってもクレアチニン値が上昇すると死亡率が増大することが明らかになった。そして、Acute Kidney Injury Networkは臨床的に問題とされる軽症から重症までの幅広い程度の腎傷害を表すのに、「急性腎不全(acute renal failure)