研麻抄
AKIによる腎外遠隔臓器障害~臨床

」の代わりに「急性腎傷害(acute kidney injury)」という用語を新しく掲げた。

以上の動向と時を同じくして、基礎研究および臨床研究の両者で新しい知見が積み重ねられ、単一臓器の機能不全というAKIについての従来の見方が変わり、多臓器不全の進展に腎機能の低下が深く関与していると見なされるようになった。Lianoらが他に先駆けて行った前向き多施設研究ではAKIの疫学的特徴が検討され、ICU入室患者のうちAKIを発症した患者では「AKIによる死亡率」が56%にも上ることが分かった。「AKIによる死亡率」とは、AKI以外の併存病態によっては説明がつかず、腎傷害による影響のみによってもたらされる死亡率という意味である。また、Levyらは同じような病態、同じような生理学的重症度スコアの患者を比較することによって重症度を調整して多変量解析を行い、AKIが死亡率を上昇させることを示した。さらに、腎不全が、敗血症、呼吸不全、意識レベル低下、出血などの他の病態に先行して発生することが明らかになり、多臓器不全発症のごく初期にAKIが起こることが分かっている。最近ではより大規模の多施設症例対照研究が行われて以上の知見と同様の結果が得られ、腎代替療法を要する患者の死亡率は対照患者の2倍にのぼることが報告された。重症度が「余すところなく判定されきっていない」可能性はあるものの、以上に紹介した研究を受け、AKIを発症する患者では重症度とは関係なく腎傷害そのものによって死亡リスクが増大するという見解が広まった。

なぜAKIが多臓器不全の先鞭をつけ、死亡率を押し上げるのであろうか?腎傷害が腎以外の臓器に及ぼす影響のうち、臨床領域で最もよく知られ研究も進んでいるのは呼吸不全である。AKIが起こると肺傷害の回復が滞り、人工呼吸器離脱の足枷になることが分かっている(人工呼吸期間 AKI群41日 vs 非AKI群21日)。非乏尿型のAKIであっても人工呼吸器からの離脱が遅れるため、体内水分量ではなく腎傷害そのものが死亡率を上昇させる原因となっていると考えられている。体内水分量の管理は腎機能が低下していると困難になるが、体内水分量の管理が不良であればさらに死亡率は上昇する。Payenらは観測研究を行い、水分出納がプラスであると死亡率が上昇する
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(critical care)12-06-05 09:59


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