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NICE-SUGAR :血糖値は180mg/dL未満で~結果 [critical care]

Intensive versus Conventional Glucose Control in Critically Ill Patients The NICE-SUGAR Study Investigators

NEJM 2009年3月26日号より

結果

対象患者
対象患者の登録および追跡調査は2004年12月から2008年11月にかけて行われた。6104名が無作為に二つの治療群のいずれかに割り当てられた。内訳は、強化血糖管理群3054名、通常血糖管理群3050名であった(Fig. 1)。強化管理群3054名のうち38名(1.2%)、通常管理群3050名のうち36名(1.2%)が研究参加への同意を後に取り消したため、データを収集できたのは、強化管理群3016名と通常管理群3014名であった。割り当て90日後の時点で、強化管理群6名(0.2%)、通常管理群2名(0.1%)が追跡不能であった。データが揃った6030名のうち、5275名(87.5%)がオーストラリアまたはニュージーランドの患者であった。

両群の基準時点における特性は同等であった(Table 1)。平均(±SD)年齢は、強化管理群60.4±17.2歳、通常管理群59.9±17.1歳であった。男性の占める割合はそれぞれ62.6%、64.2%、APACHEⅡスコアは21.1±7.9点、21.1±8.3点、手術による入室の割合は36.9%、37.2%であった。

割り当てられた治療法が定められたアルゴリズム通り行われたのは6030名中5997名(99.5%)で、強化管理群では3016名中2998名(99.4%)、通管理群では3014名中2999名(99.5%)であった。割り当てられた治療法が行われた期間の中央値は、強化管理群4.2日(四分位範囲1.9-8.7)、通常管理群4.3日(四分位範囲2.0-9.0)(P=0.69)であった。

割り当てられた治療法が決められているよりも早期に中止されたのは、強化管理群3054名中304名(10.05)、通常管理群3050名中225名(7.4%)であった。中止の理由は、患者もしくは家族による中止の申し出(強化管理群26名、通常管理群22名)もしくは担当医による中止の決定(それぞれ115名、48名)であった。担当による中止決定の理由は、重篤な有害事象(それぞれ13名、1名)、緩和ケアへの治療方針変更(それぞれ116名、115名)およびその他(それぞれ34名、39名)であった。

試験完了時において無作為化後90日時点の生死が不明であった患者が6014名中82名(1.4%)存在した。内訳は、強化管理群44名、通常管理群38名であった。このうち74名については同意が保留または取り消されたためデータが収集されていなかった。

インスリン投与と治療効果
強化管理群では通常管理群よりもインスリンを投与された患者数が多かった(3014名中2931名[97.2%] vs 3014名中2080名[69.0%], P<0.001)。インスリンの平均投与量も強化管理群の方が多かった(50.2±38.1単位/日 vs 16.9±29.0単位/日, P<0.001)(Table 2)。時間加重血糖値の平均値は、強化管理群の方が通常管理群より低かった(115±18mg/dL vs 144±23mg/dL, P<0.001)。血糖管理のその他の評価項目についてはTable 2およびFigure 2A, 2Bに示した。

栄養管理およびその他の治療内容
無作為化割り当て後14日間に投与された一日あたりの非タンパク熱量は、強化管理群891±491kcal、通常管理群872±500kcalであった(P=0.14)。このうち経腸栄養はそれぞれ624±496kcal(70.0%)、623±496kcal(71.4%)であった。経静脈栄養はそれぞれ173±359kcal(19.4%)、162±345kcal(18.6%)であった。ブドウ糖静注分はそれぞれ93.4±88.8kcal(10.5%)、87.2kcal±93.5kcal(10.0%)であった(Table 2およびAppendix B)。

無作為化割り当て後に副腎皮質ステロイドを投与された患者は強化管理群の方が通常管理群よりも多かった(3010名中1042名[34.6%] vs 3009名中955名[31.7%], P=0.02)。無作為化割り当てから副腎皮質ステロイド投与までの日数の中央値は両群とも0日(四分位範囲0-1日)であった(P=0.34)。副腎皮質ステロイド投与の適応として両群を通じてもっとも多かったのは敗血症性ショックであった。強化管理群では敗血症性ショック患者1042名中376名(36.1%)に副腎皮質ステロイドが投与され、通常管理群では955名中328名(34.8%)であった(絶対値の差, 1.7%ポイント; 95%信頼区間, -2.5~5.9; P=0.42)(Table 2)。

転帰
無作為化割り当ての90日後において、強化管理群では3010名中829名(27.5%)、通常管理群では3012名中751名(24.9%)が死亡していた(Table 3)。死亡率の絶対値の差は2.6%ポイントであった(95%信頼区間, 0.4~4.8)。通常管理群に対する強化管理群の死亡オッズ比は1.14(95%信頼区間, 1.02-1.28; P=0.02)であった。二群間の死亡率の差は、事前に定めた基準時点における危険因子で調整してもなお有意であった(調整オッズ比, 1.11; 95%信頼区間, 1.01~1.23; P=0.003)(Fig. 3A)。

全体としては直接死因の分布は二群で類似していた(P=0.12)(Table 3)。しかし、強化管理群(829名中345名[41.6%])の方が循環器疾患による死亡が通常管理群(751名中269名[35.8%])より多かった(絶対値の差5.8%ポイント; P=0.02)。両群とも死亡例は大半がICU(それぞれ、829名中546名[65.9%]、751名中498名[66.3%])またはICU退室後病棟(それぞれ、829名中220名[26.5%]、751名中197名[26.2%])で死亡していた。それ以外の死亡患者は、退院後に死亡していた(強化管理群829名中63名[7.6%]、751名中56名[7.5%])。両群とも、死亡例の90%以上で積極的な治療が差し控えられたり、中止されたりしていた(Appendix D)。

90日の追跡期間内におけるICU滞在期間および入院期間の中央値については、有意差はなかった(Table 3)。第90日にICUに滞在していた患者は、強化管理群3016名中7名(0.2%)、通常管理群3014名中6名(0.2%) (P=0.78)、入院していた患者はそれぞれ174名(5.8%)、166名(5.5%)であった(P=0.66)。

新規の臓器障害が発生した患者数は同等であった(P=0.11) (Table 3)。人工呼吸日数、腎代替療法実施日数、細菌培養が陽性となった患者数、輸血された患者数、輸血量については有意差はなかった(Table 3)。

90日後死亡率について、サブグループ解析を行ったところ、術後症例と非術後症例(P=0.10)、糖尿病の有無(P=0.60)、重症敗血症の有無(P=0.93)、APACHEⅡスコア25点以上と未満(P=0.84) のそれぞれの比較では、治療内容の違いによる影響は認められなかった (Fig. 3B)。一方、サブグループに特有な治療の実施による影響が認められたのは(強化管理群の方が転帰が良い傾向が認められたのは)、外傷の有無(P=0.07)と基準時点における副腎皮質ステロイド常用(P=0.06)であった(外傷患者と副腎皮質ステロイド常用患者では強化管理をした方が転帰が良くなる傾向が認められた)。

重度の低血糖(血糖値40mg/dL以下)に陥った患者の数は、強化管理群3016名中206名(6.8%)、通常管理群3014名中15名(0.5%)であった(オッズ比 14.7; 95%信頼区間9.0~25.9; P<0.001)。重症低血糖の発生件数は強化管理群272件、通常管理群16件であった。重度の低血糖による長期合併症の記録はなかった。(つづく)

教訓 インスリンの平均投与量は、強化管理群50.2±38.1単位/日に対し通常管理群16.9±29.0単位/日で、有意差ありでした。時間加重血糖値の平均値は、強化管理群115±18mg/dL に対し通常管理群144±23mg/dLで有意差ありでした。通常管理群に対する強化管理群の死亡オッズ比は1.14でした。

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