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VAP=気管チューブ関連肺炎① [critical care]

Ventilator-associated Pneumonia or Endotracheal Tube-associated Pneumonia?: An Approach to the Pathogenesis and Preventive Strategies Emphasizing the Importance of Endotracheal Tube

Anesthesiology 2009年3月号より

人工呼吸器関連肺炎(Ventilator Associated Pneumonia:VAP)とは、気管チューブまたは気管切開チューブを介した人工呼吸の開始後48時間以降に発症した院内肺炎のことである。早期発症型(人工呼吸開始から96時間以内に発症)と晩期発症型(96時間以降に発症)に分類される。気管挿管患者の9-27%にVAPが発症する。人工呼吸期間が長くなるほどVAP発症率は上昇する。VAP発症リスクは入院初期にもっとも高く、人工呼吸開始から5日目までは一日あたりのVAP発症リスクは3%、5日目から10日目までは一日あたり2%である。その後は一日あたり1%に低下する。VAPの発生原因や予防法については数多の研究、レビュー、メタ分析が行われてきたが、未だに議論百出の状態である。本レビューでは、気管チューブ(ETT)使用時のVAPの発生原因をテーマとした最近の研究で得られた知見を紹介し、現時点におけるVAPの捉え方を述べる。本レビューは、VAPの予防法を考える上で大いに参考になろう。

2008年3月までに英語で著された論文をPubMedおよびSCOPUSから検索した。検索に使用した用語は以下の通りである:肺炎、人工呼吸器関連肺炎、院内肺炎、人工呼吸器、気管挿管、気管チューブ、カフ、声門下分泌物、声門下分泌物ドレナージ、声門下分泌物たれ込み(aspiration)および予防。

2名の研究者が別々に対象論文を渉猟した。得られた論文は、無作為化対照比較試験、観測研究、レビュー、メタ分析、症例報告または症例集積研究のいずれかに分類した。各論文のエビデンスの質と推奨度を、GRADEシステムによって格付けした(table 1)。

気管挿管
重症患者では、意識がなく誤嚥の危険があるときの緊急気道確保、人工呼吸、排痰が十分できない患者の吸痰などの目的で気管挿管が行われる。しかし、頭部外傷患者(受傷までは健康)に緊急挿管を行うと、急速に(24時間以内)気管内粘膜に細菌が定着し、これが早期発症型VAP発生の独立した危険因子であることが明らかにされている。ただし、この患者群では、気管挿管自体というよりも、意識消失による誤嚥が早期発症型VAPの独立危険因子であると指摘されている。

気管チューブが挿入されていると粘液線毛機能や咳反射が障害されるので、気管気管支分泌物が貯留し肺炎のリスクが増大する。さらに、気管チューブを挿入するときには気管を傷つけるが多く、気管粘膜に体外または体内由来の細菌が接種される可能性がある。年齢と性別について調整した症例対照研究では、VAP発症の有意な因子として唯一明らかになったのは再挿管であった。これとは別の、人工呼吸患者750名を対象とした多施設前向き観測研究では、院内肺炎のリスク上昇と関わるのは事故抜管および人工呼吸離脱後の再挿管であるという結果が得られている。(つづく)

教訓 挿管されていると粘液線毛機能や咳反射が障害されるので、分泌物が貯留し肺炎のリスクが増大します。

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