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消化管除菌と口腔咽頭除菌~結果 [critical care]

Decontamination of the Digestive Tract and Oropharynx in ICU Patients

NEJM 2009年1月1日号より

結果

患者特性
研究に参加したICU 13施設全体で、計5939名の患者が登録された(2004年5月~2006年7月)。内訳は、従来法が1990名、SODが1904名、SDDが2045名であった。12名(SDD 11名、従来法1名)については、患者データ使用許可が得られなかったため粗死亡率以外のいずれの解析にもデータを使用しなかった。生存退院した患者のうち44名は、28日後追跡調査から脱落した。48名が二つの割り当て治療期間をまたがっていた。一施設あたりの登録患者数は、教育機関でない病院のICU(4床)の119名が最少で、大学病院ICU(43床)の1013名が最多であった。

登録候補になったのは計6565例であった(一施設あたり300名から1518名)。ICU入室患者のうち平均29.5%が登録候補になった(16.3%~51.8%)。登録候補にならなかった症例の大部分は、予定手術後のICU入室症例であった。登録候補患者のうち89.2%が実際に研究対象となった。各治療群における登録候補患者に対する実際の登録患者数の割合は、SDD 89.1%、SOD 86.9%、従来法91.6%であった(従来法vs SOD P=0.03、その他は有意差なし)。期間ごとでは、第一期間88.5%、第二期間86.6%、第三期間92.8%であった(第一vs第三 P=0.02、その他は有意差なし)。

基準時点の患者特性に関して、従来法群とSOD群およびSDD群のあいだに差が認められた(Table1)。従来法群の方がAPACHEⅡスコアがわずかに低く、人工呼吸管理を受けた患者の割合が少なく、外科系患者が多かった。ICU入室前に抗菌薬が投与された患者の割合については三群間で同等であった。SOD群およびSDD群では、研究プロトコルで定められたとおりに薬剤が投与された患者の割合は、それぞれ95.7%、97.5%であった。薬剤投与が決められた通りに行われなかった理由として最も多かったのは、患者の拒否であった。

主要評価項目および副次評価項目
28日後粗死亡率は、従来法群27.5%、SOD群26.6%、SDD群26.9%であった。年齢、性別、APACHEⅡスコア、気管挿管の有無、所属科、施設特性、研究機関についてロジスティック回帰モデルを用いて調整したところ、従来法に対する28日後死亡率のオッズ比は、SOD群0.86 (95%CI, 0.74-0.99; P=0.045)、SDD群0.83 (95%CI, 0.72-0.97; P=0.02)であった(Table2)。このモデルにP値の小さい順番に共変量を投入したところ、偏りが大きい共変量ほどオッズ比に与える影響が大きかった。クラスタ間の相関係数は0.010であった。従来法群の28日後死亡率は27.5%であり、SDD群の28日後死亡率絶対および相対減少率はそれぞれ3.5%、13%であった。SDD群ではそれぞれ2.9%、11%であった。28日後の時点で死亡数を一例減ずるための治療必要数は、SDDが29名、SODが34名であった。SDD群およびSOD群では人工呼吸期間、ICU滞在期間および入院期間が従来法群よりも短縮する傾向が認められた(Table2)。経時変化や自己相関の主要および副次評価項目に対する影響はなかった。

培養結果
従来法群と比較しSDD群おびSOD群では、黄色ブドウ球菌、ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌(主に緑膿菌)または腸内細菌による菌血症の粗発生数(ICUで発生したもの)が有意に少なかった(Table3)。SDD群ではSOD群よりも腸内細菌による菌血症の発生率が低かった。従来法群およびSOD群と比べSDD群ではカンジダ血症の発生率が低い傾向が認められたが、有意差はなかった。肺炎球菌および腸球菌による感染については三群間に有意差は認められなかった。クロストリジウム・ディフィシル毒素は従来法群15名(0.8%)、SOD群5名(0.3%)、SDD群9名(0.4%)で検出された。

一施設あたりの監視培養の平均実施率は気管内採痰87%(70~97%)、直採87%(62~100%)であった。SDD実施群における直腸擦過検体からのグラム陰性菌分離率は、第3日が56%であったのが、第8日25%、第14日15%へと低下した(Fig.1)。SDD群の口腔咽頭擦過検体のグラム陰性桿菌培養陽性率は、第2日の18%から第8日の4%へと低下した。SOD群の培養陽性率は、第2日20%、第8日7%であった(Fig.1)。

月一回の気道定着細菌検査の対象となったのは全体で2596名であった(SDD群894名、SOD群811名、従来法群891名)。直腸の定着細菌検査は2963名に実施された(SDD群988名、SOD群947名、従来法群1028名)。定着細菌についての監視培養の一施設あたり平均実施率は、直腸検体87%(67%~98%)、気管内採痰82%(69~95%)であった。各研究期間の6時点における監視培養の結果をあわせて解析した。病原菌-抗菌薬のすべての組合せについて、非感受性率は5%未満であった(Table4)。多剤耐性菌については、二剤耐性細菌の検出率が2.5%未満、三剤耐性菌は2%以下であった。直採検体からグラム陰性菌が検出された患者の耐性菌保有率は、従来法群およびSOD群と比べSDD群の方が低かった(Table4)。気管内採痰の耐性菌検出率は、SDD群とSOD群は同等で、従来法群より低かった。MRSA検出例は皆無であった。8名の患者で直採検体からVREが検出された。その内訳は、従来法群6名(0.6%)、SOD群2名(0.2%)であった。

使用抗菌薬
研究の取り決めで使用可能とした全身投与抗菌薬(抗真菌薬を含む)の、一患者一日あたり使用数中央値(1日量を1とする)については、三群間に差を認めなかった(SDD群0.72、SOD群0.84、従来法群0.84)。従来法群と比較しSDD群では、抗嫌気性菌抗菌薬の使用量が減った。内訳は、広域ペニシリン系抗菌薬が27.8%減、カルバペネム系抗菌薬が45.7%減、リンコマイシン系抗菌薬が11.6%減であった(Table5)。また、キノロン系抗菌薬(主にシプロフロキサシン)の使用量も31.4%減少した。翻って、セフェム系抗菌薬の使用量は86.6%増加した。SOD群と従来法群のあいだにはこれほどの大きな違いはなかった(Table5)。全身投与した抗菌薬をすべてあわせた使用量について従来法群と比較したところ、SDD群では11.9%、SOD群では10.1%少なかった。

有害事象
SDD群の一名において、口腔咽頭内に投与した抗菌薬ペーストが食道内に詰まり、内視鏡で除去した。(つづく)

教訓 SDDやSODを実施したところ、死亡率が下がり、菌血症の発生が減り、気管内および消化管内の細菌定着が減りました。

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