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ICUにおけるnon-albicansカンジダ感染の危険因子 [critical care]

Critical Care Medicine 2008年7月号より

Candidemia in nonneutropenic critically ill patients: Risk factors for non-albicans Candida spp.

近年、フルコナゾール耐性non-albicansカンジダ属によるカンジダ血症が増えている。抗真菌薬の投与開始時には起因真菌の薬剤感受性が不明であることが多いため、真菌に対する経験的治療に用いる抗真菌薬の選択の際にはnon-albicans カンジダ属感染の増加という事態を考慮しなければならない。C. albicansと、non-albicansカンジダ属またはC. glabrataやC. kruseiなどのフルコナゾール耐性率の高いカンジダ属のどちらがカンジダ血症の起因菌であるかを判別する臨床的予測因子が明らかになれば、検査結果が判明する前に抗真菌治療を開始する場合に、より適切な抗真菌薬の選択が可能となる。

2001年8月から2004年7月までの3年間にわたりオーストラリアにおいて前向き全国調査を行った。ICU入室48時間後以降またはICU退室後48時間以内に血液培養でカンジダがはじめて検出された場合をICUで発生したカンジダ血症と定義した。小児および好中球減少患者、CCU患者は除外した。カンジダ血症発症前30日間における危険因子を評価した。

3年間に37ヶ所のICUから183件のカンジダ血症(183名)が報告された。菌種同定が行われたのはこのうち179件であった。C. albicans 111件(62%)、C. glabrata 32件(17.9%)、C. parapsilosis 14件(7.8%)、C. tropicalis 10件(5.6%)、C. krusei 7件(3.9%)、C. dubliniensis 2件(1.1%)、菌種不明のCandida spp. 2件(1.1%)、C. curvata、C. famata、C.lusitaniae各1件(0.5%)であった。2件はカンジダ属の混合感染であった(C.albicans/C. glabrataおよびC. glabrata/菌種不明のCandida spp.)。検出された32件のC. glabrata のうち2件(6%)はフルコナゾール感受性あり(MIC<8mcg/mL)、23件(72%)は濃度依存的感受性あり(MIC=16-32mcg/mL)、7件(22%)はフルコナゾール耐性(MIC>64mcg/mL)であった。検出された7件のC. kruseiのうち6件はフルコナゾール耐性、1件は濃度依存的感受性ありであった。

多変量解析の結果、non-albicansカンジダ属によるカンジダ血症の独立した有意な危険因子は、抗真菌薬の全身投与、最近の消化管手術、経静脈的薬剤投与、年齢増加であった (OR, 4.60、2.87、11.37、1.19)。C. glabrata/ C. kruseiによるカンジダ血症の独立した有意な危険因子は、フルコナゾール投与、最近の消化管手術、経静脈的薬剤投与、年齢増加であった (OR, 5.47、3.31、4.64、1.26) 。フルコナゾール耐性カンジダ属が検出された13件のうち4件(C. glabrata 3件、C. krusei 1件)は培養でカンジダが検出されるより以前に抗真菌薬を投与されていた(フルコナゾール3件、ボリコナゾール1件)。non-albicansカンジダ属およびフルコナゾール耐性カンジダ属による血流感染患者の30日死亡率(それぞれ53%、54%)は、C. albicansおよびフルコナゾール感受性カンジダ属による感染の場合(41%)よりも高かったが、有意差は認められなかった。敗血症発生頻度、血液培養陽性5日後の人工呼吸管理実施頻度および入院期間のいずれについてもnon-albicansカンジダ属およびフルコナゾール耐性カンジダ属感染患者とC. albicansおよびフルコナゾール感受性カンジダ属感染患者との間に有意差はなかった。

non-albicansカンジダ属感染の予測因子については、移植、癌、血液疾患、好中球減少患者について調査した報告が複数あるが、好中球が減少していないICU患者についての大規模調査は今回のオーストラリア全土のICUで実施した前向き調査が先鞭となる。本研究ではカンジダ感染の60%以上がC. albicansによるものであった。血液疾患および悪性腫瘍領域ではnon-albicansカンジダ属、特にC. glabrata感染が増加していることが明らかにされており、最近ではICUでもnon-albicansカンジダ属感染が珍しくなくなった。non-albicansカンジダ属にはC. glabrata、C. kruseiなどフルコナゾール耐性菌が含まれている。血液培養で真菌が陽性であることが判明してから菌種が確定するまでには少なくとも48時間はかかる。抗真菌薬投与を早く開始する方が、真菌感染症の転帰が改善することが知られているため、臨床的徴候からnon-albicansカンジダ属感染を予測することができれば、経験的治療における適切な抗真菌薬選択に資するものと考えられる。本研究では、抗真菌薬の全身投与、最近の消化管手術、経静脈的薬剤投与、年齢増加がnon-albicansカンジダ属およびフルコナゾール耐性菌の多いC. glabrata/ C. krusei感染の危険因子であった。このうち消化管手術については過去の研究では危険因子として言及されておらず、今回の調査で初めて明らかになった。菌種や感受性が判明するに先立ちカンジダ血症の治療を開始する場合、以上の危険因子を参考に抗真菌薬を選択すべきである。

教訓 抗真菌薬の使用歴のある患者、消化管手術後、高齢患者ではnon-albicansカンジダ属感染に注意。
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