人工呼吸中の鎮静と鎮痛~鎮痛①
2週間後までの期間に行われた聞き取り調査で、疼痛があると答えた患者は40%にとどまった。疼痛の有無についてはあらゆる患者において配慮しなければならないが、全患者に鎮痛薬を投与するというような方策は必要ないということが確認されたという点で、この研究は重要な意味を持つ。ICUに収容されている人工呼吸患者の疼痛管理を最適な形で行うには、患者と直接的に意思の疎通を図らなければならない。
患者の意思を直にくみ取る必要性があることは当然ではあるが、人工呼吸中の患者から疼痛症状についての訴えを得るのは困難なことがある。いくつかの指標が疼痛の客観的評価に用いられている。数値評価スケールは、話したり指し示したりすることさえできれば患者がぼーっとしていても利用できるため、重症患者における有用性が検証されているものの一つである。これは0点から10点のスケールで、0点のところには「痛みがない」、10点のところには「想像し得る限り最悪の痛み」と記されている。しかしこのスケールを用いて正確に評価するには、数字と0点および10点の部分の注意書きがはっきりと読み取れるスケールを必ず使用し、患者が評価者の質問を理解し適切な時間内に応答できるかどうかを常に的確に判断できなければならない。行動疼痛スケール(behavioral pain scale)や重症患者疼痛観察法(Critical Care Pain Observation Tool)は、いずれも疼痛に対する行動上の反応を観察して評価する方法である。重症患者の疼痛評価における評価者間のばらつきや一致度について、この二つの行動面からの評価法と患者の自己申告に基づいて評価する数値評価スケールとの比較研究が行われている。行動疼痛スケールは、自己申告による数値評価スケールと比べ、強い疼痛ほど過小評価してしまう傾向があることが明らかにされている。非言語的疼痛スケール(Nonverbal Pain Scale)は意思の疎通を図れない患者にでも利用できる評価法で、行動と生理学的指標を組み合わせて点数化する(Table 1)。この方法は広く用いられているが、評価者間のばらつきがないことを観測研究で検討して開発された方法である。非言語疼痛スケール改訂版についての追跡調査では、侵害刺激を与える前、最中または後であるのかを評価者が知っ