研麻抄
人工呼吸中の鎮静と鎮痛~鎮痛②

Sedation and Analgesia in the Mechanically Ventilated Patient

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2012年3月1日号より

使用候補薬剤について薬理学的な基本事項を理解した上で、鎮痛薬もしくは鎮静薬を選択すべきである。重症患者の薬剤選択にあたっては、患者一人一人の病態特性を考慮しなければならない。ショック症例では肝臓や腎臓の血流が低下していて代謝や排泄に変化が生じている場合がある。各薬剤の薬物動態は昔から単回投与について研究されてきてはいるが、持続静注では単回投与とは異なる薬力学的特徴を示す。患者特性に関わる要素である肥満(分布容積に影響する)や遺伝特性(薬物の作用や代謝に影響する)も、薬剤に対する反応を変化させることがある。人為的低体温実施中は分布容積が減少するため、投与した薬剤の血漿中濃度が変化する。薬理学的な基礎知識として是非とも理解すべき重要な概念として「context-sensitive half-time(CSHT)」がある(Figure 1)。ICUで使用されるあらゆる鎮静薬や鎮痛薬は、血漿中濃度のレベルや増減の様態が時間とともに変化する。血漿中濃度は各「コンパートメント(つまり、循環血液、脂肪組織および中枢神経系の受容体)」間の濃度差によって左右される。CSHTとは、ある薬剤の持続静注終了後に血漿中濃度が投与終了時の半分になるまでに要する時間のことである。CSHTは当該薬物の分布と代謝の両者によって決定される。一般的には、持続投与時間が長いほどCSHTも延長する。この傾向が顕著な薬剤もあれば(例;ベンゾジアゼピン、モルヒネ、フェンタニル)、それほどでもない薬剤もあるが(例;プロポフォール、レミフェンタニル)、いずれにせよどんな薬剤であっても、投与時間が長引くほどCSHTも長くなり、特に長時間投与を行う場合にはこの現象が明瞭に見られる。

鎮痛薬として最も広く一般的に用いられているのはオピオイド系薬である。オピオイド系鎮痛薬の主な作用機序はμ1オピオイド受容体刺激による中枢神経系の疼痛反応阻害である。μ1受容体
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(critical care)12-06-14 07:00


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