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術後肺合併症による医療・経済負担と予防策~M&M [critical care]

Clinical and economic burden of postoperative pulmonary complications: Patient safety summit on definition, risk-reducing interventions, and preventive strategies

Critical Care Medicine 2011年9月号より

術後肺合併症がその他の術後合併症発生率および死亡率に及ぼす影響

術後肺合併症はその他の術後合併症発生率および死亡率を押し上げ、入院期間を延長させるとともに、医療資源の消費量を大幅に増加させる。Khuriらの研究では術後呼吸不全(=人工呼吸器離脱失敗)の患者の5年死亡率は50%以上で、10年死亡率は70%以上であることが明らかにされている。全体の術後30日死亡率が10%の集団において、術後肺合併症を発症しなかった患者の術後30日死亡率は2%であるが、発症した場合は21%であることが明らかにされている。Siglの研究では、術後肺合併症(術後肺炎、気管支攣縮、気管気管支炎、胸水、無気肺、気胸、ARDSおよび呼吸不全)のリスクは65歳未満の患者では上昇するとされているが、McAlisterの研究では、術後肺合併症(術後肺炎、人工呼吸を要する呼吸不全および気管支鏡による吸痰を要する無気肺)のリスクは65歳以上の患者で上昇すると報告されている。

GhaferiらはNSQIPデータベースを利用し院内死亡率と術後肺合併症(術後肺炎、48時間以上の人工呼吸管理および予定外の気管挿管)の関係について検討した。研究参加病院は死亡率によって5つのグループに分けた。術後肺炎の死亡率は16.5%~25.5%、48時間以上の人工呼吸管理を要した患者の死亡率は20.6%~31.0%、予定外の再挿管が行われた患者の死亡率は24.8%~38.4%であった。この研究の結論では、周術期死亡率を低下させるには、術後合併症が発症したときの患者管理の向上が不可欠であると述べられている。KhuriらはNSQIPデータベースを用い、患者の転帰について平均8年間の追跡調査を実施した。術後肺合併症(術後肺炎、予定外の再挿管および人工呼吸器離脱失敗)が起こった患者の生存期間中央値は、術後肺合併症が起こらなかった患者と比べ87%短かった(2.2年 vs 17.1年)。

Thompsonらは腹部手術を受けた618,495名の患者を対象に、術後肺炎が転帰に及ぼす影響を検討した。術後肺炎が発症しなかった患者と比べ、発症した患者は院内死亡率が10倍高く(1.2% vs 10.7%; オッズ比9.91)、入院期間が55%延長し、自宅ではなく療養施設へ退院する危険性が6倍に跳ね上がることが明らかになった。この結果を受け著者らは、術後肺合併症の予防および治療のよりよい方法を確立し普及することが必要であるとしている。

Siglらはクリーブランドクリニック周術期診療記録システムのデータベースを用い、術後肺合併症による院内死亡のリスクを評価した。この研究では、術後肺炎、気管支攣縮、気管気管支炎、胸水、無気肺、ARDS、気胸、人工呼吸または「呼吸不全」のうち少なくとも一つに当てはまる場合を術後肺合併症ありとされた。術後肺合併症のなかった群と比べ、術後肺合併症のあった群では院内死亡リスクが、16-64歳の場合は77倍、65歳以上の場合は19倍に上昇することが分かった。術後肺合併症発生群の死亡リスクは術後1年が経過しても高く、非発生群と比べ16-64歳では2.9倍、65歳以上では2.3倍であった。

教訓 術後肺合併症が発生すると、発生しなかった場合と比べ術後1年が経過しても死亡率は2~3倍高いことが分かっています。再挿管、術後肺炎、離脱失敗のいずれかに当てはまると、生存期間が10年以上短縮します。
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