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重症外傷後の敗血症をプロカルシトニンで予測~方法 [critical care]

Procalcitonin as a prognostic and diagnostic tool for septic complications after major trauma

Critical Care Medicine 2009年6月号より

重症外傷は、全身性炎症反応症候群(SIRS)の強力な発症要因である。外科系ICU患者の90%以上にSIRSが認められる。だが、体温、心拍数、白血球数および呼吸数といった、旧来の炎症診断基準は、当てにならないことも多く、感染や重症度を予測するのに役立つとは言えない。感染が起こった場合、早期に診断し治療を開始すれば死亡率が低下する。しかし、培養結果が判明するまでに時間がかかったり、定着なのか感染なのかを見極めるのが難しかったりするため、重症外傷患者では往々にして感染の診断が遅れる。

プロカルシトニン(PCT)はカルシトニン遺伝子関連ペプチドファミリーに属すタンパクで、カルシトニンの前駆物質の一つである。カルシトニン遺伝子関連ペプチドファミリーにはPCTの他に、カルシトニン遺伝子関連ペプチドⅠおよびⅡ、アミリン(膵から分泌される)、アドレノメデュリン(副腎から分泌される)、カルシトニンおよびその前駆物質が属している。正常では、甲状腺のC細胞内でPCTがタンパク分解酵素によって開裂してカルシトニンが産生され分泌される。全身性の細菌感染または、エンドトキシンやIL-1やTNF-αなどの炎症促進サイトカインによる刺激によって、2-3時間以内にPCTは正常の1000倍まで激増する。この場合のPCT産生は内分泌系によるものではなく、甲状腺以外の細胞で行われる。PCTは感染があると直ちに急激に増加するため、細菌感染の診断に有用であると考えられている。PCTの半減期は約22時間であり、細菌感染のモニタリングには都合がよい。他の炎症マーカの多くは感染急性期に上昇した後、感染が消退してもなかなか低下しないが、PCTは半減期が他のマーカよりも短いため、抗菌薬治療などにより感染が勢いを失えば時をおかずに低下するからである。

C反応性タンパク(CRP)とPCTは、重症患者や外傷患者における感染および敗血症の発生を評価するのに用いられてきた。しかし、臨床的には、CRPやPCTだけで感染の診断ができるわけではない。CRPやPCTの産生は感染以外のいろいろな要因によって誘導されるのである。最近行われたメタ分析では、手術または外傷後の重症患者における敗血症の診断にはCRPよりもPCTが優れているという結果が得られている。

外傷や術後経過中に敗血症が発生した場合の、PCTおよびCRPの有用性については、限られた少しのデータしかないのが現状である。本研究の目的は、重症外傷後の敗血症合併によるPCTおよびCRP再上昇の診断的意義を明らかにし、重症度、臓器不全および敗血症のマーカとしての予測性能を評価することである。

方法
2003年1月から2005年12月のあいだにCarlo Poma病院(イタリア)のICUに入室し、24時間以上生存した16歳以上の外傷患者連続94名を対象とした。脳神経外科の症例は除外した。年齢、性別、SAPSⅡ、外傷の重症度(ISS)をICU入室時から連日記録した。PCT、CRP、体温、白血球数、動脈血ガス分析、乳酸値を毎日測定し、記録した。培養検体は、臨床症状から必要と判断された場合に採取した。敗血症、重症敗血症、敗血症性ショックおよびSIRSの定義には、American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conferenceが策定したものを採用した。連続3日以上この定義で決められた基準が満たされた場合を、SIRSまたは敗血症の発症と判断した。外傷の重症度はISSに従って評価した。SOFAスコアを用いて臓器障害の発生状況と重症度を記録した。SIRSの臨床症状があり、かつ、培養結果により感染源が特定できるand/or血培陽性であれば敗血症発症と判断した。感染が疑われた時点で抗菌薬または抗真菌薬を予測的に投与し、必要であれば培養結果や検査データに応じて薬剤を変更した。副腎皮質ステロイドは投与しなかった。

観測を開始した日を第1日(T1)とした。敗血症の発症時点は、敗血症を疑い確定診断のため検体を採取した時とした。培養が陽性であった患者のみを敗血症発症例に分類した。培養結果が判明するのは、検体採取日の数日であるが、敗血症発症日は検体を採取したその日とした。

教訓 PCTは感染があると直ちに急激に増加します。PCTの半減期は約22時間なので、細菌感染のモニタリングに適しています。


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