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重症外傷後の敗血症をプロカルシトニンで予測~結果 [critical care]

Procalcitonin as a prognostic and diagnostic tool for septic complications after major trauma

Critical Care Medicine 2009年6月号より

結果

期間中に182名の外傷患者が収容された。そのうち24時間以内に死亡した24名と脳神経外科手術を要した64名は除外した。本研究の解析対象となったのは94名(多発外傷76名、頭部外傷のみ18名)であった。年齢は16歳から89歳であった(中央値59.2歳)。男性が62名(66%)であった。死亡は5名で、死因は以下の通りであった。:腹膜炎1名、外傷そのものが重症で24時間後以降30時間後までに死亡したのが3名、腐食性の液体を飲んだことによる合併症1名。感染による死亡例は皆無であった。ISS中央値は25点で、敗血症を発症した患者(17%)では36点であった。SAPSⅡの中央値は33.5点であった(四分位範囲17.6-36、平均36.23±16.2)。観測総日数は1045日であった(一人当たり平均11.1日、最短1日、最長30日)。感染性合併症は16名に認められた。内訳は、VAP(4名)、血流感染(4名)、下部気道感染(3名)、腹膜炎(2名)、軟部組織感染(2名)、尿路感染(1名)であった。起因菌(グラム陽性か陰性か)の別によるPCT値の差や、感染部位によるCRPおよびPCT値の差は認められなかった。

敗血症発症とPCT/CRPの再上昇
受傷によるPCT上昇がピークに達し下降に転じた後の敗血症発症を確実に見極めるのに、PCTの連日測定は有用であった。CRPは、敗血症発症日にはその前日と比べ有意な上昇が見られなかったが、PCTは発症早々から前日より有意な上昇を示した:PCTは前日0.85(0.48-3.2)ng/mLから発症当日3.32(1-5.85)ng/mLに上昇(p<0.01)。CRPは前日135(62-203)mg/Lから発症当日175 (79-210)mg/Lに上昇(有意差なし)(Figs. 1&2)。

入室時PCT/CRP値による敗血症発症の予測
ICU入室後に敗血症を発症した外傷患者の入室時PCT値は、敗血症を発症しなかった患者の入室時PCT値より高かった:5.4 (2.9-25)ng/mL vs. 1.6 (0.4-4.80)ng/mL (p<0.001) (Fig. 3)。入室時CRP値は敗血症を発症した患者では38 (11-56) mg/L、敗血症を発症しなかった患者では36 (7-95) mg/Lであった(有意差なし)。敗血症診断における入室時測定値ROC曲線のAUCは、PCTが0.787 (p<0.001; カットオフ値1.09ng/mL)、CRPは0.489であった(Fig. 4)。

入室時PCT/CRP値による臓器不全の予測
対象患者全員についての入室時PCTとSOFAスコアの相関係数は0.566、敗血症を発症した患者に限ると0.722であった(カイ二乗値0.596, p<0.001)。CRPとSOFAスコアの相関係数はそれぞれ、-0.038、-0.456であった。乳酸値とSOFAスコアの相関係数は、それぞれ0.045、0.567であった(p=0.027)。

SOFAスコアとの相関
SOFAスコア別(点数順に4群に分けた)のPCT、CRPおよび乳酸値をTable 1に示す(注:この表は年齢別になっていますが、きっと間違いだと思います)。いずれの項目についても、SOFAスコアが高くなるほど上昇が認められ、その相関係数はPCT 0.438、乳酸0.395、CRP 0.209であった(p<0.001)。PCTとSOFAの回帰式は、-4.509+1.812×SOFAであった(CRP=90.67+0.577×SOFA、乳酸=0.766+1.91×SOFA)。PCTについての回帰式のy切片は原点に近かったが、CRPでは大きかった。つまり、PCTと比べるとCRPは、あまり重症でなくても高く出てしまうということを示している。

受傷後のPCT/CRPの変動
対象患者の66%では、血漿PCT濃度は受傷当日に最高値を示した。25%の患者では、受傷翌日に最高値に達した。CRPの上昇スピードはPCTより緩徐であり、受傷当日が最高値であったのが17%、翌日が最高値であったのが20%であった。

外傷の重症度との相関
受傷後PCT最高値と外傷の重症度(ISS)とは弱い相関を示した(r=0.483, p<0.001)。後に敗血症を発症した患者に限っても、受傷後PCT最高値と外傷の重症度(ISS)の相関は弱かった(r=0.66, p=0.005)。

教訓 受傷によるPCT上昇がピークに達し下降に転じた後の敗血症発症を確実に見極めるのに、PCTの連日測定は有用でした。CRPは、敗血症発症日にはその前日と比べ有意な上昇が見られませんでしたが、PCTは発症早々から前日より有意な上昇を示しました。ICU入室後に敗血症を発症した外傷患者の入室時PCT値は、敗血症を発症しなかった患者の入室時PCT値より有意に高いという結果が得られました。CRPではこのようなパターンは認められません。

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