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麻酔科医と薬物依存~診断と治療 [anesthesiology]

Anesthesiology 2008年11月号より

Addiction and Substance Abuse in Anesthesiology.

初期治療
薬物依存を専門とする精神科医が診断と治療にあたる。薬物依存の診断が確定したら、薬物依存医師の受け入れが可能な入院施設に収容して治療を開始する。他の薬物依存医師とお互いに支援しあえるような施設であることが重要である。ほとんどの治療施設はミネソタ治療モデル(アルコール依存症治療モデルから作成された薬物依存治療プログラム)に基づいて運営されている。治療プログラムには、体内からの薬物除去(detoxification)、薬物非使用の監視、徹底した教育、自助グループへの参加および心理療法が含まれている。通常8-12週間で治療期間は終了するが、場合によっては6-12ヶ月間に延長されることもある。オピオイドやその他の麻酔薬の薬物依存であれば、通常は居住型治療施設に2ヶ月から一年間収容される。薬物依存の治療には医療保険からの給付が下りない(下りたとしてもごく少額)ため、負担はかなり大きくなる。居住型治療施設での治療には、一週間当たり3000から4500米ドルが必要である。

初期治療後の治療法
初期治療プログラムが成功裡に終了すると、社会復帰施設に4-8週間入所するかまたは直接自宅に戻ることになる。入院治療を終えた薬物依存医師が職場に復帰するには、州医学会などの組織による監督下に置かれる必要がある。監督は最短でも5年間継続され、監督機関のケースワーカによる定期的面接、職場での観察、抜き打ち尿検査および薬物スクリーニング検査が行われる。

断薬モニタリング
薬物依存から回復した者の断薬モニタリングには主に尿検査が用いられる。一般的な薬物依存に対する尿検査の費用は一回90米ドルほどであり、回復初期は週2-3回の検査が必要である。フェンタニル、スフェンタニル、プロポフォールなど一般的でない薬物のモニタリングの検査費用は通常より高額である。

オピオイド受容体拮抗薬
ナルトレキソンはナロキソンと似た、比較的純粋なμ受容体拮抗薬である。ナルトレキソンはナロキソンと異なり内服でも高い効果が得られるため、手術室に復帰する麻酔科医の薬物依存治療の一翼を担っている。ナルトレキソンのオピオイド受容体に対する競合的拮抗作用は24-48時間持続する。用法は、一日一回50mgまたは一回300mgを週三回である。ナルトレキソンのオピオイド拮抗作用は多量の(呼吸が即停止するぐらいの量の)オピオイド投与で打ち消される。ナルトレキソン処方には、体内からのオピオイド除去が必須である。オピオイドが抜けきっていない状態でナルトレキソンを服用すると重篤な禁断症状が現れる。ナルトレキソンの主な副作用は、腹痛、不安、関節痛、寒気、便秘、抑鬱、下痢、めまい、頭痛、射精障害、勃起不全、易刺激性、筋肉痛、悪心嘔吐、神経過敏、紅潮、睡眠障害である。

自助グループ
薬物依存医師の治療において自助グループへの参加は非常に重要な位置を占める。アルコール依存症自助グループの「12段階プログラム」が応用されている。

専門家による経過観察
治療施設からの退院後には薬物依存専門精神科医の定期的な診察を受けることを義務づけられることが多い。退院後当初は頻繁に受診しなければならないことが多いが、落ち着けば一ヶ月に1-2回受診する。

心理療法
薬物依存医師の回復初期にはグループ療法とともに心理療法が義務づけられる。これらの治療が当該医師の医療保険でカバーされなかったり、当該医師が失職のため無保険であったりする場合は、治療費はすべて自費負担となることに配慮が必要である。近年では、回復途上にある薬物依存医師に対する支援を強化するため、グループ療法に家族も参加することが重要であると考えられている。家族が治療に参加することによって転帰が改善するという報告がある。

超迅速解毒(Ultrarapid Detoxification)
薬物依存の第一段階は、detoxificationである。入院施設では、患者をdetoxification病棟に収容し禁断症状・徴候の監視と治療を行う。Detoxificationには数日を要し、患者は非常に大きな苦しみを味わう。最近では24時間以内にdetoxificationを完了するultrarapid detoxificationという方法を行う施設もある。この方法は、オピオイドの乱用は禁断症状を避けようとして発生するものであり、禁断症状を経験させないことによって再発を防ぐことができるという推論に基づいたものである。具体的には、通常は外来で、全身麻酔下にオピオイド受容体拮抗薬を投与する。終了後は、再発防止のためナルトレキソンの維持療法を行う。だが、薬物依存の発生に関与した心理的問題や患者の置かれている状況についての介入はほとんど行われない。この方法の長期的有効性(再発の防止)は、従来の方法を上回るものではないという結果が得られている。(つづく)

教訓 米国では薬物依存の治療には莫大な費用がかかります。ultrarapid detoxは再発防止には結びつかないようです。

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