研麻抄
AKIによる腎外遠隔臓器障害~心

Acute Kidney Injury and Extrarenal Organ Dysfunction: New Concepts and Experimental Evidence

Anesthesiology 2012年5月号より

AKIと心機能低下

心腎症候群と言って、心不全と腎不全が同時に起こることがある。通常は心臓か腎臓かのいずれかが臓器不全の首座となる。AKI発症後に心不全が起こるタイプのものは、心腎症候群3型に分類されている。AKIに引き続いて心機能が低下する要因は、水分過多による肺水腫、酸血症による肺血管収縮、尿毒症に起因する心外膜炎や心筋収縮力低下、高カリウム血症による不整脈などである。以上に挙げた要因はいずれもたいていは是正可能であるが、こういった要因がない場合でもAKIが起こるとそれだけで心機能が低下することがある。

炎症性サイトカインが心臓関連の転帰によくない影響をおよぼすことを裏付ける知見が、基礎研究と臨床研究のいずれにおいても続々と報告されている。フラミンガム研究では、TNF-αやIL-6の血中濃度が高い患者は鬱血性心不全を発症するリスクが高いことが明らかにされている。CRPが5mg/dL以上であると鬱血性心不全の発症リスクが2.8倍に増大する。さらに、TNF-α-、IL-6およびCRPのいずれもが上昇している患者では鬱血性心不全のリスクが一層高いことが分かっている(ハザード比4.07)。心不全症状のある患者では、TNF-αの血中濃度が重症度やNYHAスコアと直接的に相関し、臨床転帰不良の予測にもつながる。鬱血性心不全の患者は、慢性炎症でみられるのと同じ様々な特徴を呈する。重症鬱血性心不全症例ではTNF-α血中濃度が高く、その上昇程度が心臓悪液質の発症と有意に関連する。

左室機能低下、肺水腫、左室リモデリング、心筋肥大および心筋アポトーシスなどの進行に、ナトリウムおよび水分貯留作用のある神経ホルモンだけでなく、TNF-αおよびIL-6が関わっていることが動物実験でも示され、鬱血性心不全の発症過程にサイトカインが関与していることが裏付けられている。TNF-α過剰発
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(critical care)12-06-11 07:00


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