研麻抄
AKIによる腎外遠隔臓器障害~動物実..

るが、マウスに腎毒性物質を投与したり敗血症を起こしたりすることによって、望ましい形でAKIを引き起こすことは一筋縄ではいかないため、実験で用いるには適していない。造影剤腎症を例に挙げると、造影剤投与のみによっては期待するような腎傷害は発生しがたいため、造影剤投与に先立ち、他の腎毒性物質を投与する上に虚血まで引き起こさなければモデルを作成できないことが多いのである。同様に、ゲンタマイシンの腎毒性を研究する場合も、グラム陰性菌による敗血症などを引き起こした上でゲンタマイシンを投与してモデルが作成されている。

腎傷害の動物モデルを用いる研究には、動物種の違いに由来する複数の問題点がある。ヒトでは低血圧やショックによって腎血流量が低下すると虚血性尿細管壊死が起こることが多い。しかし、ラットでは高度低血圧が長時間続いても普通は腎傷害を来さない。そのため、「単一侵襲」動物モデルの作成にはふさわしくない。一方、ヒトでは虚血再灌流が起こっても部分的にわずかな組織学的変化が生ずるだけであるが、同程度の侵襲がラットに与えられると近位尿細管が広汎かつ高度な壊死に陥る。つまり、実際の症例では複数の要因によってAKIが発生していると考えられるが、腎虚血再灌流や腎摘除などの「単一侵襲」によるAKIモデルでは、こういった状況を反映することができないのである。

動物モデルには以上のような困難や問題がつきまとう。しかし、AKIが腎臓だけの問題ではなく、好中球遊走、サイトカイン発現および酸化ストレスの増強などの炎症促進作用を波及させ、肺(table 2)、心臓、肝臓、腸管および脳(table 3)などの他の臓器の機能をも障害するということを明らかにする上で、AKI動物モデルを用いた実験は一役買ってきた。(fig. 2)。標的となる終末臓器へ向けて好中球が血管外へ遊走する現象は、急性炎症に伴う自然免疫反応に特徴的である。この現象はサイトカイン発現におけるアップレギュレーションをもたらし、直接的に終末臓器を傷害する。その結果、血管透過性が亢進する。アルブミンに対して高い親和性を持つ染料であるエバンスブルーを静注すると通常は血管内に残るが、血管の統合性が破綻していると血管外に漏出する。そのため、エバン
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(critical care)12-06-06 08:25


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