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心外・脳外以外の手術における周術期脳血管障害~頻度とM&M [anesthesiology]

Perioperative Stroke in Noncardiac, Nonneurosurgical Surgery

Anesthesiology 2011年10月号より

心外/脳外以外の手術における周術期脳血管障害の発生頻度、合併症および死亡率

心臓、脳、頸動脈以外の手術における周術期脳血管障害の発生頻度は、0.05~7.4%であると報告されている(table 1)。報告されている周術期脳血管障害の発生頻度にこのように大きなばらつきがあるのは、患者母集団、これまで40年にわたる医療の変化、研究設計、診断検査法および術後追跡期間などの違いのせいであると考えられる。過去の研究も最近の研究も、大半が入退院管理データベースを用いた遡及的研究である。このようなデータベースでは、本格的な脳血管障害の大多数を捕捉することはできるが、軽症脳血管障害、潜伏性脳血管障害や一過性脳虚血発作は把握しきれない。患者の治療に関わる者がちゃんとカルテに記録しなかったり、記録されていたとしてもデータベースのコード登録担当者がその内容を正しく理解できなかったりするからである。

周術期脳血管障害が発生すると、その転帰はほとんどが絶望的である。内科領域における脳血管障害の死亡率は12.6%である。一方、周術期脳血管障害の死亡率は、一般外科の場合が26%で、脳血管障害の既往がある患者であれば87%にものぼる。重症脳血管障害による早期死亡の主な原因は、外科系病棟でそれと気づいて診断するのが遅れること、脳浮腫および頭蓋内圧亢進である。一方、晩期死亡の原因は誤嚥、肺炎、代謝異常、敗血症または心筋梗塞であることが多い。

脳血管障害の経過における複数の段階の病態生理に炎症が関わっていることが、多くの研究で明らかにされている。そして、脳以外の部位に炎症があると、脳血管障害が発生しやすくなったり転帰が悪化したりするということに注目が集まっている。これはおそらく、脳血管障害による病態生理的変化を炎症が増悪させるためである(table1)。手術によってSIRSが発生すると、虚血性脳傷害が引き起こされたり、悪化したりする可能性がある。敗血症に神経傷害を合併した動物モデルを用いた研究および臨床研究では、特に呼吸器感染や尿路感染が先行する場合には、そうでない場合と比べ神経脱落症状がより重症であることが示されている。術後の炎症反応には様々なインターロイキンが関与していることが分かっている。例えば、IL-1、IL-6およびTNF-αである。IL-6は術後のストレス反応における主役とも言うべきメディエイタである。周術期に急性虚血性脳血管障害が発生した患者では、IL-6血中濃度の最高値が、CT上の梗塞域および臨床転帰(3ヶ月の修正ランキンスケール)と有意に相関するという興味深い結果が発表されている。IL-6血中濃度の最高値が30pg/dL以上の場合、そうでない場合よりも12ヶ月後死亡率が高いことが分かっている。別の研究では、急性虚血性脳血管障害患者の入院時IL-6血中濃度が院内死亡率と相関することが報告されている。この研究ではIL-6が1単位増えると、急性虚血性脳血管障害症例の入院中の死亡リスクが18%上昇するとされている。

教訓 周術期ではない脳血管障害の死亡率は12.6%ですが、周術期脳血管障害の死亡率は、一般外科の場合が26%で、脳血管障害の既往がある患者であれば87%にものぼります。脳以外の部位に炎症があると、脳血管障害が発生しやすくなったり転帰が悪化したりするようです。

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