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吸入麻酔薬はOLVによる炎症を抑制する~方法 [anesthesiology]

Anesthetic-induced Improvement of the Inflammatory Response to One-lung Ventilation

Anesthesiology 2009年6月号より

本研究はClinicalTrials.govにおいて国際登録された(NCT00515905)。OLVを要する開胸または胸腔鏡下の肺切除術が予定されたASA I-Ⅲの成人患者54名を対象とした(fig. 1)。患者は、プロポフォールによるTIVA(プロポフォール群, n=27)か、セボフルランによる吸入麻酔(セボフルラン群, n=27)に無作為に割り当てられた。

除外基準は、ステロイドの全身または局所投与中、肺または肺以外の感染(CRP>10ng/mL、白血球数>10,000/μL)、重症COPD(GOLDのステージ2-4)、再発性気胸の既往、肺切除術の既往とした。

麻酔
全例で、麻酔導入1時間前にミダゾラム7.5mgを経口投与した。開胸手術については、区域麻酔の一般的禁忌事由に該当しなければ、胸部硬膜外カテーテルをTh4/5からTh7/8のいずれかの椎間から留置し、0.33%ロピバカインを5-8mL/hrで持続投与し、術中および術後の疼痛管理を行った。

プロポフォールで麻酔を導入した。プロポフォール群は目標濃度3-5mcg/mLに設定したTCIで投与し、セボフルラン群はボーラス投与(1.5-2.5mg/kg)した。両群とも、フェンタニル(3mcg/kg)とアトラキュリウム(0.5mg/kg)の投与後に気管挿管した。プロポフォール1MAC-awake(年齢で調整)またはセボフルラン1MAC(年齢で調整) で全身麻酔を維持した。必要に応じフェンタニル1-2mcg/kgをボーラス投与し術中疼痛管理を行った。胸部硬膜外カテーテルを留置された場合は、0.33%ロピバカインの持続投与(5-8mL/hr)で除痛した。加えて、レミフェンタニル0.1-0.3mcg/kg/minも投与した。筋弛緩が必要な場合は、アトラキュリウム(10mgボーラス投与)を使用した。

両群とも、左用または右用ダブルルーメン気管支内チューブ(37-41Fr)を使用し、気管支鏡で正しい位置に留置されていることを確認した。両肺換気もOLVも、PEEP5cmH2O、最高気道内圧30cmH2O未満のPCVで人工呼吸を行った。吸入気酸素濃度(FIO2)は、両肺換気の間は0.8、OLVおよびBAL中は1.0とした。両肺換気中は、動脈血二酸化炭素分圧を35-45mmHgに維持するよう一回換気量~8mL/kg、呼吸回数10-15/minの範囲内で人工呼吸器設定を調節した。OLV中は、FIO2 1.0で酸素飽和度が85%を上回るよう、一回換気量6-7mL/kg、呼吸回数10-20/minの範囲内で人工呼吸器設定を調節した。非換気側肺への酸素吸送、リクルートメント手技、間欠的PEEP付加が行われた患者は解析対象から除外した。

手術終了後に、非換気側の換気を再開した(用手的に30cmH2Oの圧を 10秒間かけることを4回繰り返した)。麻酔覚醒後、抜管した。患者は回復室または集中治療室へ収容され術後管理が行われた。

両群とも麻酔中は、観血的動脈圧、心電図、心拍数、酸素飽和度、呼気終末二酸化炭素分圧、中心静脈圧、体温および尿量を監視し記録した。必要に応じ、動脈血ガス分析を行った。

輸液には晶質液を用いた。必要に応じ、ハイドロキシエチルスターチ製剤(130/0.4)を投与したり、晶質液投与量を増やしたりした。輸血を要した患者はいなかった。全例で抗菌薬の予防投与を行った。

主要エンドポイント

BALFと血漿
BALF中の炎症性メディエイタを主要エンドポイントとした。一回目のBALはOLV開始前に非換気側とする予定の肺について行った(T1)。二回目は手術終了後、両肺換気再開直後に同側肺から行った(T2)。T1およびT2の両時点ともに、同時に末梢血検体を動脈圧カテーテルから採取した。採血を行ったのは、研究後半の27人についてのみである(プロポフォール群14名、セボフルラン群13名)(fig. 1)。BALF中の細胞を定量的および定性的に分析した。

BALは気管支鏡を用い、無菌的に実施した。一回あたり平均150mLの0.9%塩化ナトリウム溶液を使用した。気管支鏡先端を亜区域気管支に楔入させた。対象亜区域に無菌生理的食塩水(0.9%, pH7.4)を50mL注入した。その後、注入した生理的食塩水を愛護的に吸引した。回収率はおよそ50%であった。

BALFと血液検体はともに遠心分離し、上清は-20℃で保存した。患者27名から得たBALFを遠心分離してできた細胞ペレットを用い、細胞分画を計測した。好中球の占める割合の、T2とT1の差を算出し、BALF中の炎症性メディエイタ濃度の差との相関を調べた。炎症性メディエイタの検出には、ELISA法を用いた。

走化性の解析
健康ドナーからヒト好中球を得て、蛍光色素で標識した。プロポフォール群およびセボフルラン群からOLV時間が同等の患者を一名ずつ抽出し(全部で6組のペア)、健康ドナーから得た好中球のBALF中における挙動を観察した。好中球は走化性因子の濃度差にしたがって動く様子をビデオ顕微鏡で撮影した。

二次エンドポイント
術後の臨床的転帰を二次エンドポイントとして評価した。有害事象をその対象とした。次の項目を記録した:術前(基準時点)、POD1、POD3およびPOD5のCRPと白血球数。

術後に発生した有害事象のうち以下のものを記録した:抗菌薬治療を要する呼吸器感染症、画像上確認された肺炎、無気肺、胸水および瘻孔、再挿管、SIRS、敗血症、ARDS、再手術、死亡。

教訓 プロポフォールまたはセボでOLVの麻酔を行い、BALFを調べて炎症反応を比較しました。

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