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術中覚醒高リスク患者の術中覚醒を防ぐには~結果 [anesthesiology]

Prevention of Intraoperative Awareness in a High-Risk Surgical Population

NEJM 2011年8月18日号より

結果

対象患者

2008年5月から2010年5月の25ヶ月間のあいだに、およそ49000名が本研究の対象候補として検討され、このうち6041名が登録された。計5809名が実際に本研究の対象となり、そのうち術後72時間以内および抜管30日後に設定された術後聞き取り調査のうち少なくとも一回が行われた5713名(98.3%)が主要転帰項目についての解析の対象となった(Fig. 1)。術後聞き取り調査が二回とも行われたのは計5413名(93.2%)であった。対象患者全員に、無作為割り当て通りのプロトコルに準じた治療が行われた。ETAC群の6名では、術中の一時期にBIS値を麻酔担当医が知り得た。対象患者の基準時点における特性と、保有する術中覚醒危険因子をTable 1にまとめた。

術中覚醒

全体で49名の患者が「眠りに落ちていった」時と手術終了の際に「目が覚めた」時のあいだの記憶があると答えた。術中記憶があると答えた患者が皆無であった研究実施施設はなかった。この症例を専門家が検討した結果、術中覚醒ありと判断されたのは9名(発生率0.16%; 95%信頼区間, 0.08-0.30)で、術中覚醒ありと術中覚醒の可能性ありの患者はあわせて27名(発生率0.47%; 95%信頼区間, 0.32-0.68)であった。当初の予想に反し、ETAC群の方がBIS群より術中覚醒症例が少なかった(つまり、対立仮説に反する結果が得られたということ)。ミシガン術中覚醒分類基準(Michigan Awareness Classification Instrument)に準じた術中覚醒症例の分類評価をTable 2に示した。BIS群とETAC群の術中覚醒症例発生頻度の比較をTable 3に示した。術中覚醒症例についての詳細なデータはNEJM.org上に掲載のSupplementary Appendixを参照のこと。

術中覚醒ありまたは術中覚醒の可能性ありのいずれかに該当する患者の特性と、術中覚醒なしと判断された患者の特性を比較したものをTable 4に示した。術中覚醒がなかった患者と比べ、術中覚醒があった患者では、該当する術中覚醒危険因子が中央値で一つ多く、基礎疾患の数が中央値で一つ多かった。術中覚醒ありであった患者9名のうち5名および術中覚醒の可能性ありの患者18名のうち6名は、BIS値が60を超えることがなかったか、ETACが0.7年齢調整MACを下回ることがなかった。全体では、麻酔維持中の中央値94.0%(四分位範囲93.6-100)の期間においてBIS値が60を下回り、ETACは中央値84.8%(四分位範囲67.2-95.3)の期間において0.7年齢調整MACを上回った。

鎮静薬、オピオイドおよび筋弛緩薬の使用量については両群のあいだに差はなかった。例えば、ミダゾラムはBIS群の80.8%、ETAC群の79.7%に投与された。麻酔維持中のETAC中央値は、ETAC群、BIS群ともに0.9年齢調整MAC(四分位範囲0.8-1.0)で、BIS値中央値は両群ともに41(四分位範囲38-45)であった。ETAC中央値は三か所の研究実施施設とも同等であった(シカゴ0.8年齢調整MAC、セントルイス0.9年齢調整MAC、ウィニペグ0.9年齢調整MAC)。BIS中央値についても同様で三施設とも同等であった(シカゴ43、セントルイス41、ウィニペグ43)。BIS群の30日死亡率は1.96%(2907名中57名が術後30日までに死亡)、ETAC群の30日死亡率は2.21%(2902名中64名が死亡)であった(差は0.24パーセンテージポイント;95%信頼区間 -0.50~0.99)。入院期間中央値およびICU滞在日数は両群共にそれぞれ7.0日、2.1日であった。

教訓 Table1の術中覚醒危険因子 予定開心術、大動脈狭窄症、肺高血圧症、オピオイド常用、ベンゾジアゼピン常用、抗痙攣薬常用、毎日飲酒する、ASA PS4、末期肺疾患、術中覚醒の既往、挿管困難の既往、挿管困難が予測される、EF<40%、運動耐容能がぎりぎり

術中覚醒が起こったことが確実な症例の発生率は、BIS群0.24%、ETAC群0.07%でした(有意差なし)。術中覚醒が起こった可能性がある症例の発生率は、BIS群0.66%、ETAC群0.28%でした(有意差なし)。
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