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緑膿菌肺炎~PK/PD [critical care]

Pneumonia Due to Pseudomonas aeruginosa Part II: Antimicrobial Resistance, Pharmacodynamic Concepts, and Antibiotic Therapy

CHEST 2011年5月号より

PK/PDを考える

アミノグリコシド系薬は、濃度依存性に効果をもたらす抗菌薬である。このタイプの抗菌薬は、濃度がMIC(最小発育阻止濃度)の10倍以上のときに殺菌能力を最大限に発揮する。致死量の細菌を投与して作成した感染モデル動物は、アミノグリコシド系薬の一日量を三分割して8時間おきに投与するよりも、一日分を一回で投与する方が生存率が高いことが分かっている。一方、βラクタム系薬は時間依存性に効果をもたらす抗菌薬である。このタイプの抗菌薬は持続投与すると、薬力学の概念である最小発育阻止濃度超過時間(time above MIC)を最大化することができる。一日一回投与や持続投与は、調剤コストの削減にも寄与する。

βラクタム系薬を持続投与したときと間欠投与したときの臨床効果の比較についての研究は少なくとも七編が発表されている(Table 3)。そのうち五編では緑膿菌肺炎の患者が対象として含まれ、全対象患者に占める割合は13%(4/31)から53.1%(103/194)であった。この五編で用いられた薬剤は、ピペラシリン/タゾバクタム、イミペネム/シラスタチン、メロペネムおよびセフタジジムであった。死亡率および治療転帰(治癒、改善、治療失敗)が臨床効果の評価項目とされた。持続投与の方が高い有効性を得られるという結果を示した研究は二編で、三編では有意差なしという結果が得られた。七編のうち残りの二編では、起因菌や感染部位が明示されていなかったが、持続投与の方が転帰が良かった。薬力学的な目標値を達成するには、間欠投与より持続投与の方が優れていることが示されている。したがって、緑膿菌肺炎の症例では抗緑膿菌βラクタム系薬を持続投与することを積極的に考慮すべきである。

抗緑膿菌抗菌薬の中でもメロペネムやドリペネム関しては、静脈内投与にかける時間を一時間から四時間に延長する簡単な方法が試みられている。投与間隔が何時間であろうが、一回の投与にかける時間を延ばせば最小発育阻止濃度超過時間(time above MIC)も増加するので、高いMICを要する細菌の根絶には適している。ドリペネムはin vitroでは緑膿菌に対して最も強力な効果を示すカルバペネム系薬である。人工呼吸器関連肺炎(VAP)患者531名を対象としてドリペネムとイミペネムの効果を比較した前向き無作為化試験では、イミペネム群よりドリペネム群の方が緑膿菌肺炎患者の臨床的および微生物学的治癒率が高い傾向が認められたが、統計学的な有意差はなかった。

ポリミキシンも濃度依存性に抗菌活性を発揮する。感染動物モデルでは血中濃度-時間曲線下面積(AUC)が抗菌活性を予測するのに最適な指標であることが分かっている。ポリミキシンが濃度依存性に直ちに殺菌能を示し、軽度ではない接種効果(細菌量が増えるとMICもそれにしたがって上昇すること)を伴うことがtime-kill試験で確認されている。ポリミキシンには逆PAE(negative postantibiotic effect)という他に類のない作用がある。ポリミキシン投与後にポリミキシン濃度が緑膿菌に対するMICを下回ると、2~6時間にわたり緑膿菌の増殖能が大幅に増加するのである。ポリミキシン感受性の株がいなくなってポリミキシン耐性株が取って代わって急速に増殖することが原因である。コリスチンは一日三回投与だと耐性菌の発生を最大限抑制することができることが薬力学モデルで示されている。したがって、コリスチンは6~8時間おきに投与するのが望ましい。

教訓 緑膿菌肺炎の症例では抗緑膿菌βラクタム系薬を持続投与することを積極的に考慮します。アミノグリコシドは一日一回です。コリスチンは一日三回です。
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