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緑膿菌肺炎~抗菌薬耐性① [critical care]

Pneumonia Due to Pseudomonas aeruginosa Part II: Antimicrobial Resistance, Pharmacodynamic Concepts, and Antibiotic Therapy

CHEST 2011年5月号より

緑膿菌は抗菌薬耐性を獲得する能力が高く、数多くの耐性機構を装備している悪質な細菌である。緑膿菌肺炎の死亡率は高い。治療には極めて難渋する。本総説では、抗菌薬耐性の疫学、緑膿菌の耐性機構、抗緑膿菌活性の高い抗菌薬および抗緑膿菌βラクタム薬の薬物動態/薬力学(PK/PD)について詳述する。また、多剤併用療法の利点と、コリスチンや抗菌薬エアロゾル製剤の適応についても紹介する。

抗菌療法

全国調査によると、緑膿菌株の70%以上に対して抗菌活性を持つ抗菌薬は、アミノグリコシド系薬、抗緑膿菌ペニシリン系薬、抗緑膿菌セファロスポリン系薬およびカルバペネムである(Table 1)。モノバクタム系薬のアズトレオナムは抗緑膿菌セファロスポリン系薬と同じような抗緑膿菌活性を発揮するが、あまり選択されない。その主な理由は、グラム陽性菌および嫌気性菌といった緑膿菌と同時に分離されることの多い細菌に対する活性が低いからである。抗緑膿菌薬と考えられているキノロン系薬は二種類ある。シプロフロキサシンとレボフロキサシンである(Table 1)。シプロフロキサシンのMIC(0.5mcg/mL)はレボフロキサシンのMIC(1.0mcg/mL)より低く、シプロフロキサシンの方がやや強力なように思われるものの、血中および組織移行性がレボフロキサシンより低いため、この程度の差は帳消しになってしまう。つまり、この二剤の抗緑膿菌活性はほぼ同等ということになる。

耐性の疫学

緑膿菌の抗菌薬耐性はどんどん進化している(Table 2)。米国で行われた三件の大規模調査で過去9~13年のあいだに、フルオロキノロン耐性(15%→40%)、第三世代セファロスポリン耐性(15%→32%)およびカルバペネム耐性(13%→23%)を示す緑膿菌が増えていることが明らかになっている。分離される緑膿菌は、57%~67%が気道検体のものである。

ICUに収容されている気管挿管患者では、抗緑膿菌抗菌薬の投与開始から10日以内に多剤耐性緑膿菌が検出されることがある。交叉耐性が見られることも珍しくない。例えば、ピペラシリン耐性緑膿菌およびシプロフロキサシン耐性緑膿菌は、それぞれピペラシリン感受性緑膿菌およびシプロフロキサシン緑膿菌と比べ、他の系統の緑膿菌にも耐性を示す頻度が高いことが分かっている。

抗菌薬耐性

緑膿菌は、院内肺炎の原因となる多剤耐性グラム陰性桿菌の代表格である。緑膿菌の抗菌薬耐性(自然耐性)発現には少なくとも5通りの機構が関与している。さらに、抗菌薬耐性(獲得耐性)をエンコードする遺伝子を獲得することもできる。主要な耐性化機構は以下の三つである:βラクタマーゼの産生、外膜タンパクの欠損および薬剤排出ポンプのアップレギュレーション(Table 2)。ジャイレースの変異および酵素の不活化は、それぞれキノロン系薬およびアミノグリコシド系薬に特異的な耐性化機構である。以上の耐性化機構は、一つの細菌に同時に複数が存在することがある。これが多剤耐性化の正体である。

緑膿菌は色々な種類のβラクタマーゼを作りだし、広く拡散したり、思いがけない耐性パターンが出現したりすることになる。緑膿菌が産生するβラクタマーゼのうち、AmpC遺伝子が産生するものが大部分を占める。このβラクタマーゼには、様々な抗緑膿菌抗菌薬によって「誘導される」という特性があるため、耐性化に拍車がかかる。AmpC βラクタマーゼは菌体内からの調節によって抑制される。ある種の抗菌薬に曝露されて変異した緑膿菌は、大量のAmpC βラクタマーゼを産生するようになる。このような「脱抑制」化した変異株には、第三世代セファロスポリン系薬およびチカルシリン/クラブラン酸が選択される。基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL; extended-spectrum β-lactamase)は、第三世代セファロスポリン系薬、抗緑膿菌ペニシリン系薬および第一世代、第二世代セファロスポリン系薬を加水分解する働きを持つ(Table 1)。ESBL獲得には、配列挿入、トランスポゾンおよびインテグロンなどの遺伝的機構が関わっている。

教訓 緑膿菌が産生するβラクタマーゼには、様々な抗緑膿菌抗菌薬によって「誘導される」という性質があります。ESBLは第三世代セファロスポリン系薬、抗緑膿菌ペニシリン系薬および第一世代、第二世代セファロスポリン系薬を加水分解します。
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