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緑膿菌肺炎~診断② [critical care]

Pneumonia Due to Pseudomonas aeruginosa Part I: Epidemiology, Clinical Diagnosis, and Source

CHEST 2011年4月号より

診断手順

侵襲的検査による定量培養が望ましいと言われている。明確な診断手順を確立しようと多くの研究が行われてきたが、すでに抗菌薬を使用している場合をどう扱うかとか、検査手順が標準化されていなかったり、結果を判定する診断基準が統一されていなかったり、といった色々な問題点がつきまとっていて、決定版と言えるような診断手順はまだない。三種類の診断手順が無作為化試験で評価されおり、この三つは肺炎が疑われる患者において実用に耐える方法であると考えられる。

1. フランスに所在する31か所のICUにおいて413名の患者を対象に見事な比較対照試験が行われ、侵襲的検査によってVAPの診断を行うと、広域スペクトラム抗菌薬の使用量が減り、死亡率が向上することが明らかにされている。この研究ではPSB(protected specimen brush)を用いた気管支鏡検査で検体を得て、定量培養の結果について、定着は細菌数10^3cfu/mL未満、感染は細菌数10^3cfu/mL以上という診断基準を設けた。緑膿菌(またはアシネトバクター属)に感染していた患者は、これらの細菌の定着患者よりも死亡率が有意に高かった。
2. 気管内吸引で得られた検体の定量培養は今すぐにでも実施可能な方法である。この方法をBAL検体の定量培養と比較する多施設無作為化試験が、北米に所在する28か所のICUに収容された患者740名を対象として実施された。両群の転帰と抗菌薬総使用量は同等であった。この研究には、緑膿菌が分離された患者を除外したという重大な注意点がある。
3. 肺に浸潤影のある患者において、抗菌薬一剤を三日間使用するだけにとどめる予測的抗菌薬投与の可否をCPISの点数をもとに判断できるかどうかが検証された。この方法では、肺炎を本当に発症しているのかそうでないのかの判断はしないのだが、CPISの点数が低ければ、感染の可能性は低く、患者の状態は安定していると考えられる。この方法は患者管理の実態に即していて、予測的に広域スペクトラム抗菌薬を長期間投与する現行の方法に取って代わる安全な選択肢である。肺炎と定着を見分けるのは往々にして困難であるため、このような方法を実施すれば、耐性緑膿菌による重複感染や抗菌薬の副作用などのリスクに患者を曝すことなく、治療効果を最大限に引き出すことが可能である。三日後に培養結果を見て再評価を行えば、抗菌薬を安心して止めることができる。

画像所見
(略)
緑膿菌肺炎に特異的な画像所見はない。緑膿菌肺炎の確定診断に胸部X線写真を用いることはできない。

教訓 緑膿菌肺炎の確定診断には、気管支鏡を用いて得た検体(PSB、BAL、気管内採痰)の定量培養が必要です。その上で、細菌量や臨床所見から定着か感染かを見極めなければなりません。

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