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健常人の予定手術における術前絶飲食と誤嚥予防 [anesthesiology]

Practice Guidelines for Preoperative Fasting and the Use of Pharmacologic Agents to Reduce the Risk of Pulmonary Aspiration: Application to Healthy Patients Undergoing Elective Procedures: An Updated Report by the American Society of Anesthesiologists Committee on Standards and Practice Parameters

Anesthesiology 2011年3月号より

術前評価

カルテ閲覧、理学的所見、患者からの聞き取りなどにより誤嚥リスクについての情報を収集し術前評価を行う。誤嚥の危険性が高いと考えられる病態として、食道胃逆流症、嚥下困難、その他の消化管運動障害、気道確保困難が予測される、代謝性疾患(糖尿病など)などが挙げられる。患者には、絶飲食の必要性とその理由について、手術に先立ち時間的余裕を持って説明しなければならない。本ガイドラインに示した絶飲食に関する推奨事項に準拠しない場合は、実施しようとしている処置の利害得失を考え、術前に摂取させる水分や固形物の量および種類を十分に検討しなければならない。

術前絶飲食:清澄飲料(clear liquids)

全身麻酔、区域麻酔もしくは鎮静/鎮痛(=MAC; monitored anesthesia care)を要する予定手術の場合、清澄飲料の摂取は遅くとも手術2時間前までには中止する。水、果肉を含まないフルーツジュース、炭酸飲料、ストレートティ、ブラックコーヒーなどが清澄飲料に当たる。以上は例であり、これらの飲料だけに限定されるわけではない。アルコールは清澄飲料には含まれない。術前に摂取する飲料については、量よりも種類の方が重要である。

術前絶飲食:母乳

全身麻酔、区域麻酔もしくは鎮静/鎮痛(=MAC; monitored anesthesia care)を要する予定手術の場合、母乳の摂取は遅くとも手術4時間前までには中止する。

術前絶飲食:乳児用調整粉乳

全身麻酔、区域麻酔もしくは鎮静/鎮痛(=MAC; monitored anesthesia care)を要する予定手術の場合、乳児用調整粉乳(粉ミルク)の摂取は遅くとも手術4時間前までには中止する。

術前絶飲食:固形物および母乳以外のミルク

全身麻酔、区域麻酔もしくは鎮静/鎮痛(=MAC; monitored anesthesia care)を要する予定手術の場合、軽食(トーストなど。)または母乳以外のミルクの摂取は遅くとも手術6時間前までには中止する。揚げ物、脂肪分の多いものや肉は胃内滞留時間が長いとされている。したがって、このような食べ物を摂取する場合はさらに長時間の絶食時間を設ける必要があると考えられる(例;8時間以上)。適切な絶食時間を決定する際には、摂取する食事の量と種類の両方を十分検討しなければならない。母乳以外のミルクの胃内滞留時間は固形物と同等であり、母乳以外のミルクの絶食時間を決める際には量についても指定すべきである。

消化管運動賦活薬の術前投与

誤嚥のリスクが高いと判断される患者以外では、誤嚥の危険性を低下させる目的で消化管運動賦活薬を術前にルーチーンで投与することは推奨されない。

胃酸分泌抑制薬の術前投与

誤嚥のリスクが高いと判断される患者以外では、誤嚥の危険性を低下させる目的で胃酸分泌抑制薬を術前にルーチーンで投与することは推奨されない。

制酸薬の術前投与

誤嚥のリスクが高いと判断される患者以外では、誤嚥の危険性を低下させる目的で制酸薬を術前にルーチーンで投与することは推奨されない。誤嚥リスク低減以外の目的で制酸薬の投与を要する場合には、非粒子性の制酸薬を用いる。粒子性の制酸薬を投与してはならない。

制吐薬の術前投与

誤嚥のリスクが高いと判断される患者以外では、誤嚥の危険性を低下させる目的で制吐薬を術前にルーチーンで投与することは推奨されない。

抗コリン薬の術前投与

誤嚥の危険性を低下する目的で抗コリン薬を投与することは推奨されない。

H2ブロッカーと消化管運動賦活薬などの多剤併用術前投与

誤嚥のリスクが高いと判断される患者以外では、誤嚥の危険性を低下させる目的でルーチーンに多剤併用術前投与を行うことは推奨されない。

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