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集中治療文献レビュー 2010年12月② [critical care]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年12月号より

Survival Differences Following Lung Transplantation Among US Transplant Centers. JAMA 2010; 304:53-60

肺移植をうけた患者の3年生存率を調べてみると、単一施設からの報告では75%もの高い生存率が示されている。施設によって肺移植の生存率には差があり、医療の質に開きがあると考えられている。生存率の差が生ずる原因を理解することによって、全ての肺移植患者の受ける医療の質と転帰を改善するヒントが得られる可能性がある。

本研究は米国に所在する61か所の肺移植実施施設で1987年から2009までのあいだに行われた成人肺移植症例15642例を対象とした遡及的研究である。大半が、肺移植を年間10-25例(39.3%)または25-50例(49.5%)実施している施設で行われた症例である。全対象患者における生存期間中央値は4.9年、1年生存率、3年生存率および5年生存率はそれぞれ79.7%、63.0%、49.5%であった。レシピエント、ドナー、術式などの特性の違いによって調整してもなお、施設間で生存率に有意差(P<0.001)があることが分かった。年間実施件数が多いほど生存期間が長いという相関が認められた。しかし、年間実施件数が少ない施設でも、転帰は良好であった。

解説
本研究では、肺移植レシピエントが受ける医療の質に差があり、その差は実施件数の差だけでは説明できないということが分かった。むしろ、一部の施設において肺移植後の生存率が良好であるのは、部分的には肺移植後の死亡率に施設間でばらつきがあるせいであると考えられる。成績の良い施設でのやり方を、他のあらゆる肺移植センターにおける医療の質を改善するための参考とすべきである。

Risk factors for ischaemic and intracerebral haemorrhagic stroke in 22 countries (the INTERSTROKE study): a case-control study. Lancet 2010; 376:112-23

国民所得が中位以下の国々では脳血管障害の死亡率が高いが(85%以上)、こういった地域に特有の危険因子は明らかにされていない。INTERSTROKEは、国際多施設症例対照研究であり、全所得階層の国々において脳血管障害に関わる従来の危険因子および最近増えている危険因子を明らかにすることを目的に行われた。本論文では、このような大規模研究が現実的に可能であることを裏付けるデータが示された。

本研究には22ヶ国に所在する84施設が参加した。初回の脳血管障害で症状発現から5日以内に入院し、入院から72時間以内であり、1週間以内にCTまたはMRIを実施する予定となった患者を対象とした。可能であれば、院内または地域内で脳血管障害の既往がなく、年齢、性別および人種が同じ対照患者を設定した。

第一相において、脳血管障害患者3000例と対照患者3000例が得られた。患者の内訳は、虚血性脳血管障害が78%、出血性脳血管障害が22%であった。脳血管障害のリスクがもっとも高かったのは、高血圧患者であった。高血圧患者では、脳血管障害の中でもとりわけ脳出血のリスクが高かった。喫煙も脳血管障害リスクの増大と関連していた。一日あたりの喫煙本数が多いほどリスクが大きかった。

解説
この世界規模の症例対照研究によって、脳血管障害のリスクの90%を網羅する主要リスクが明らかになった。高血圧、喫煙、ウエスト/ヒップ比、食事、アルコール摂取などが、脳血管障害の主なリスクである。血圧の管理、禁煙、運動および健康的な食事の指導は、簡単で有効な脳血管障害リスク低減対策となり得る。

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