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集中治療文献レビュー 2010年12月① [critical care]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年12月号より

Compression-Only CPR or Standard CPR in Out-of-Hospital Cardiac Arrest. N Engl J Med 2010; 363:434-442

心停止患者では胸骨圧迫のみのCPRが有用であることを示す文献が、最近になって複数発表されている。小規模または遡及的研究では、従来のCPRと胸骨圧迫のみのCPRは同等の有効性を発揮するという結果が得られている。

本研究はスウェーデンで行われた前向き無作為化試験であり、心停止患者を対象とし30日後生存率について胸骨圧迫のみのCPR(620名)と従来のCPR(656名)の比較が行われた。救急隊到着までの蘇生法を(胸骨圧迫のみのCPRまたは従来のCPRのいずれか)、救急者要請時に救急出動指令者が指示した。出動指令者には胸骨圧迫のみおよび従来法の両方のCPRの詳しい実施法を書面で伝えた。ただし、必要があれば救急要請者に対する個別の指示に変更を加えてもよいこととした。

対象患者の過半(67%)が男性で、平均年齢層は67-68歳であった。心停止発生場所として最も多かったのは自宅であった(76%)。胸骨圧迫のみのCPRと従来のCPRを比較したところ、一日後生存率(24.0% vs 20.9%)および30日後生存率(8.7% vs 7.0%)に差は認められなかった。年齢、救急隊到着までの時間、当初の心調律などによって分類した色々なサブグループについての解析でも、胸骨圧迫のみのCPRと従来のCPRのあいだに有意差はなかった。

解説
この前向き無作為化試験では、目撃者のある院外心停止症例に対し救急隊到着までに胸骨圧迫のみのCPRを行った場合と従来のCPRを行った場合とで30日後生存率に差がないことが分かった。胸骨圧迫のみのCPRは簡単に指導できるため、目撃者のある院外心停止症例では、救急要請の電話をかけてきた一般市民が救急隊到着までに実施する蘇生法として胸骨圧迫のみのCPRが推奨される可能性がある。

CPR with Chest Compression Alone or with Rescue Breathing. N Engl J Med 2010; 363:423-433

院外心停止症例では、直ちにCPRを開始することによって生存率や長期転帰が改善する可能性がある。最近、胸骨圧迫のみのCPRであれば、人工呼吸を行わない分、心停止の現場に居合わせた人や目撃者にとっても負担が少ないであろうということで、人工呼吸を組み合わせた従来のCPRよりも胸骨圧迫のみのCPRを推奨する機運が生まれている。

本研究は米国で行われた多施設前向き無作為化試験(Dispatcher-assisted Resuscitation Trial [DART])である。救急出動指令者の指示により要請者が胸骨圧迫のみのCPR(981名)または人工呼吸を行う従来のCPR(960名)を行い、その効果を比較した。スウェーデンで行われた研究と同様に、成人の心停止を目撃して911通報(日本の119番通報)した一般市民にCPRを行うよう指示し、同意が得られれば救急出動指令者がどちらか一方のCPR法の実施法を口頭で伝えた。全患者について生存退院の有無を調査した。

対象患者の過半(66%)が男性で、救急隊到着までの平均時間は約6分であった。生存退院した患者の割合は胸骨圧迫のみのCPRと人工呼吸を行う従来のCPRとで同等であった(14.4% vs 11.5%)。心原性心停止患者では、胸骨圧迫のみのCPRの方が人工呼吸を行う従来のCPRと比べ、生存率(15.5% vs 12.3%)および神経学的所見が良好な患者の割合(18.9% vs 12.3%)が高い傾向が認められた。しかし、非心原性心停止患者ではいずれも同等であった。

解説
人工呼吸を行わないCPR法は、心停止の現場に居合わせた一般市民にとって抵抗が少ないと考えられる。この米国で行われた研究では、救急出動指令者の指示の下で、心停止患者が人工呼吸なしのCPRまたは人工呼吸ありのCPRのいずれかに無作為に割り当てられ、生存退院率に有意差がないという結果が得られた。本研究で得られた知見は、心停止患者の転帰改善をかなえるには胸骨圧迫のみのCPRを行うべきであるという意見をさらに裏付けるものである。

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