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外傷とトラネキサム酸~結果 [critical care]

Effects of tranexamic acid on death, vascular occlusive events, and blood transfusion in trauma patients with significant haemorrhage (CRASH-2): a randomised, placebo-controlled trial

The Lancet 2010年7月3日号より

結果

研究の全体像をFigure 1に示した。計20211名の患者をトラネキサム酸群または偽薬群に無作為に割り当てた。無作為化割り当て後に参加同意を取り消した患者4名は、研究対象から除外した。登録後に16歳未満であることが判明した患者が5名存在した。年齢が不明であった患者が4名存在した。23名は受傷8時間以降に登録された。11名は受傷時間が不明であった。外傷以外の原因による出血を来した患者が9名存在した。3名に、割り当てられた試験薬剤と異なる試験薬剤が投与された。34名については、同意取得の手順に遺漏があった。当該施設の倫理委員会にその旨通達し、この34名のデータの使用許可を得た。同意を取り消した4名を除いた全ての患者を解析対象とした。

基準時点の患者特性のすべての項目について、トラネキサム酸群と偽薬群のあいだに有意差はなかった(table 1)。主要転帰データは無作為化割り当ての対象となった患者20211名中99.6%に当たる20127名(トラネキサム酸群10060名、偽薬群10067名)について得られた。そのうち19944名(99.6%)には初回投与が規定通り行われ、引き続く8時間の持続投与は18965名(94.2%)に行われた。3076名(15.3%)が死亡し、そのうち1086名(35.3%)は無作為化割り当て当日に死亡した(figure 2)。出血による死亡は1063例であり、そのうち637例(59.9%)は無作為化割り当て当日の死亡であった。

全死因死亡率は、トラネキサム酸群の方が有意に低かった(table 2)。トラネキサム酸群における死亡の相対危険度は0.91であった(95%CI 0.85-0.97, p=0.0035; table 2)。トラネキサム酸群では出血死のリスクが有意に低かった(table 2)。無作為化割り当て当日だけに限ってみても、出血死リスクの有意な低下が認められた(トラネキサム酸群282名[2.8%] vs 偽薬群355名[3.5%]; RR 0.80, 95%CI 0.68-0.93, p=0.0036)。血管閉塞による死亡例は、トラネキサム酸群33例(0.3%)、偽薬群48名(0.5%)であった(table 2)。内訳は、心筋梗塞7名vs 22名、脳梗塞8名vs 5名、肺塞栓18名vs 21名であった。多臓器不全、頭部外傷、その他の原因による死亡については、いずれもトラネキサム酸群と偽薬群のあいだに有意差は認められなかった(table 2)。

血管閉塞による合併症(致死的であるかないかを問わない)の発生率には有意差はなかった。血管閉塞による合併症(心筋梗塞、脳梗塞、肺塞栓、深部静脈血栓症)のいずれかを発症した患者は、トラネキサム酸群168名(1.7%)、偽薬群201名(2.0%)であった(table 3)。

トラネキサム酸群5067名(50.4%)、偽薬群5160名(51.3%)に輸血が行われた(table 3)。トラネキサム酸群で輸血された患者における平均輸血単位数は6.06単位(SD 9.98)、偽薬群では平均6.29単位(SD 10.31)であった。何らかの手術(脳神経外科手術、胸部手術、腹部手術または骨盤内手術)を受けた患者数は、トラネキサム酸群4814名(47.9%)、偽薬群4836名(48.0%)であった(table 3)。遺伝子組み換え活性化第Ⅶ因子を投与された患者は17名にとどまった(トラネキサム酸群13名、偽薬群4名)。両群13名ずつに消化管出血が発生した(p=0.99)。

退院時または第28日時点において死亡もしくは要介護状態であったのは、トラネキサム酸群3453名(34.3%)、偽薬群3562名(35.4%)であった(RR 0.97, 95%CI, 0.93-1.00; p=0.12)。退院時または第28日時点において無症状であったのは、トラネキサム酸群1483名(14.7%)、偽薬群1334名(13.3%)であった(table 3)。全体で1846名が第28日時点に至っても入院中であった(トラネキサム酸群958名vs偽薬群888名)。

患者特性によってトラネキサム酸の効果に偏りがあることを示すはっきりした根拠(p<0.001)がない限り、患者全体の解析で得られた相対危険度が最も優れた指標であり、各サブグループにおける相対危険度を概ね反映すると前もって想定した。解析の結果、予め設定した以下のいずれのサブグループについても、トラネキサム酸の効果は同じように認められた:収縮期血圧(不均一性 p=0.51)、無作為化割り当て時点のGCS(p=0.50)、外傷の種類(p=0.37)、受傷から無作為化割り当てまでの時間(p=0.11)。以上の解析のうち受傷から無作為化割り当てまでの時間については、末端数字選考(末尾の数字をゼロや5に切り上げたり切り下げたりする好みによって生ずるバイアス)のため受傷後早期(1時間未満)の患者数が妙に少なかったため、正確なサブグループ解析を行うことができないと考えた。したがって事後的に、1時間未満というカテゴリを1時間以下と変更した(figure 3)。

経過中に緊急事態が発生し、割り当てられた薬剤が何かをその時点で明らかにしなければならないような症例はなかった。予期しない重篤な有害事象や割り当て薬剤に起因すると考えられる重篤な有害事象の発生例はなかった。

教訓 20211名が無作為化割り当ての対象となりました。全死因死亡率および出血による死亡率はともに、トラネキサム酸群の方が有意に低いという結果が得られました。血管閉塞による合併症の発生率には有意差は認められませんでした。
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