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外傷とトラネキサム酸~方法 [critical care]

Effects of tranexamic acid on death, vascular occlusive events, and blood transfusion in trauma patients with significant haemorrhage (CRASH-2): a randomised, placebo-controlled trial

The Lancet 2010年7月3日号より

方法

CRASH-2(Clinical Randomisation of an Antifibrinolytic in Significant Haemorrhage 2)は、短期間のトラネキサム酸投与が外傷患者の死亡率、血管閉塞発生率および輸血量に及ぼす影響を評価する目的で行われた大規模偽薬対照比較試験である。本試験は40ヶ国274か所の病院で行われた。第一番目の患者登録は2005年5月である。本研究の目的、方法およびプロトコルについては既に発表済みである。プロトコルは査読の上2005年にThe Lancetのウェブサイト上に掲載された。

深刻な出血(収縮期血圧<90mmHg and/or心拍数>110bpm)が現に存在するかそのリスクがあると判断され、受傷後8時間以内の成人外傷患者を登録候補とした。トラネキサム酸を投与すべきかせざるべきか、担当医が判断に迷う患者を対象とした(つまり、不確定性原理に基づいて行った)。トラネキサム酸投与の適応が明らかにあると担当医が判断した症例は、無作為化割り当ての対象とはしなかった。同様に、トラネキサム酸が禁忌であると判断された症例も無作為化割り当ての対象とはしなかった。つまり、トラネキサム酸の適応があるのか、それとも禁忌なのか、担当医がよく分からずに迷った症例を無作為化割り当ての対象としたのである。

無作為化と盲検化

施設ごとの偏りが生じないようにブロック無作為化を行った。性別、年齢、受傷後経過時間、外傷の種類(鈍的外傷か貫通外傷か)、GCS、収縮期血圧、呼吸数、毛細血管再充満時間および国について偏りが生じないように最小化アルゴリズムを適用した。

トラネキサム酸と偽薬のアンプルはいずれも、全く同じで見分けがつかないようにした。トラネキサム酸はPharmacia社が製造したものを用い、偽薬はSt. Mary’s Pharmaceutical Unitが用意した。無作為化割り当て用の薬剤梱包は、独立した臨床試験サービス会社が担当した。無作為に抽出したアンプルについて高速液体クロマトグラフィを用いて検査し、盲検化とアンプルの番号が正しいことを確認した。

薬剤投与方法

トラネキサム酸は初期投与として10分かけて1gを投与し、引き続いて1gを8時間かけて持続静注した。偽薬には0.9%食塩水(生食)を使用した。各患者には一人一人に割り当てられた番号が記された箱が届いた。箱の中身は、トラネキサム酸500mgまたは生食の入ったアンプル4本、生食100mL1本、シリンジ、針、無作為化番号を記したシール(輸液バッグ、データ記録用紙およびカルテに貼付)および説明書とした。

転帰項目および予め設定したサブグループについての解析

主要転帰項目は、受傷4週後までの院内死亡とした。死因は以下のように分類した:出血、血管閉塞(心筋梗塞、脳梗塞および肺塞栓)、多臓器不全、頭部外傷、その他。二次転帰項目は、血管閉塞による合併症(心筋梗塞、脳梗塞、肺塞栓および深部静脈血栓)、手術(脳神経外科手術、胸部手術、腹部手術および骨盤内手術)、輸血の有無および血液製剤使用単位数とした。自立度については退院時または退院に至っていない場合は第28日に、修正オックスフォード機能障害分類を用いて評価した。この分類に従い機能障害の程度を、死亡、一日中全介護が必要、一部介護が必要、自立しているが日常生活にある程度の制限がある、何らかの軽い症状があるが日常生活に制限はない、無症状のいずれに当たるか評価した。遺伝子組み換え活性化第Ⅶ因子使用の有無および合併症としての消化管出血の有無についてもデータ収集の対象とした。割り当てた薬剤によって発生する可能性があると当初予測した合併症については転帰記録用紙に記載することになっていたため、予測した合併症以外の重篤な合併症で、割り当てられた薬剤に起因する疑いがあるものについては別途報告することにした。転帰の評価および記録は、患者退院時または無作為化後第28日のいずれか早い時点に実施した。

主要転帰項目についての効果は、基準時点における特性により4つのサブグループに分けて解析することにした:(1) 受傷後推定経過時間(1時間未満、1~3時間、3~8時間);(2) 収縮期血圧(75mmHg以下、76~89mmHg、90mmHg以上);(3) GCS (重症3~8点、中等症9~12点、軽症13~15点);(4) 外傷の種類(貫通外傷のみ、鈍的外傷[貫通外傷+鈍的外傷と鈍的外傷のみのいずれでも可])。

教訓 出血を呈する外傷患者を対象とした無作為化試験です。トラネキサム酸または生食を投与しました。トラネキサム酸は、はじめに1g/10min ボーラス、その後8時間かけて1gを持続静注しました。
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