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麻酔文献レビュー2010年10月② [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年10月号より

Apixaban versus enoxaparin for thromboprophylaxis after knee replacement (ADVANCE-2): a randomised double-blind trial. Lancet 2010; 375: 807-15

整形外科患者では、出血のリスクを最小限に抑えつつ、凝固能が亢進するのを防ぐことが重要である。現時点で臨床使用可能な薬剤(ワーファリンやエノキサパリンなど)は有効だが、投与量の調節や投与経路の選定が厄介である。過去に行われた諸研究では、経口抗Ⅹa薬のアピキサバンが、整形外科手術を受ける患者には有用であることが報告されている。

ここに紹介した多施設無作為化二重盲検第Ⅲ相試験(ADVANCE-2)では、TKR術後症例を対象に、アピキサバン内服と広く使用されている抗凝固薬であるエノキサパリンについて有効性と安全性の比較検討が行われた。片側もしくは両側TKRを予定された患者(1529名)を、アピキサバン内服群(1回25mg、1日2回を閉創の12-24時間後から開始)もしくはエノキサパリン皮下注群(1回40mg、1日1回を手術12時間前から開始)に無作為に割り当てた。症状を伴う深部静脈血栓症/肺塞栓、出血および創部合併症の有無を毎日評価した。さらに、割り当てられた薬剤の最終投与から30日後および60日後に追跡調査を行った。

患者の大半(72%)は女性で、年齢は約67歳であった。割り当てられた薬剤の平均投与期間は、両群とも12日であった。主要エンドポイント(あらゆるタイプの静脈血栓塞栓症および全死因死亡)の発生率は、エノキサパリン群よりアピキサバン群の方が低かった(24% vs. 15%; 相対危険度0.62; P<0.0001)。アピキサバン群では、致死的肺塞栓が2例発生した。追跡調査が行われた患者における、症状を伴う深部静脈血栓症(アピキサバン群2/1458、エノキサパリン群1/1469)および肺塞栓(それぞれ3/1458、1/1469)の発生は両群とも極めて少なかった。多量の出血または多量ではないが臨床的に問題となった出血の発生率は両群同等であった(アピキサバン群4% vs. エノキサパリン群5%; P=0.09)。

解説
整形外科患者の術後管理において、血栓予防は重要な一翼を担っている。だが、凝血塊ができるのを防ぐという利益と、出血の危険とを比較考量する必要がある。アピキサバンは経口投与が可能な抗Ⅹa薬である。アピキサバンの方が低分子ヘパリンのエノキサパリンよりも、深部静脈血栓、肺塞栓および死亡を防ぐ効果が高いことが明らかになった。出血性合併症の発生率は、二剤とも同等であった。

Long-Term Outcome of Open or Endovascular Repair of Abdominal Aortic Aneurysm. N Engl J Med. 2010; 362: 1881-9

Endovascular versus Open Repair of Abdominal Aortic Aneurysm. N Engl J Med. 2010; 362: 1863-71

サイズの大きい腹部大動脈瘤では、開腹術と比べ血管内治療の方が周術期生存率の点で優れている可能性がある。しかし、長い目で見てどちらの方が良いのかを知るには、長期追跡調査を行う必要がある。

ここに紹介したのは、開腹術と血管内治療の術後長期追跡調査を行ったDutch Randomized Endovascular Aneurysm Repair(DREAM)とEndovascular Aneurysm Repair(EVAR1)という2編の臨床試験である。どちらも無作為化多施設試験であり、開腹術または血管内治療のいずれかを要する腹部大動脈瘤成人患者が対象となった(表参照)。

解説
この2編の多施設RCTは、開腹術よりも血管内治療の方が長期転帰の点で優れているという見解を検証することを目的として実施された。6年後の時点における生存率は、いずれの試験においても両群同等であるという結果が得られた。そして、再手術施行率は血管内治療群の方が高いことが明らかになった。

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