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集中治療文献レビュー2010年9月① [critical care]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年9月号より

Prophylactic intravenous magnesium sulfate for treatment of aneurysmal subarachnoid hemorrhage: A randomized, placebo-controlled, clinical study. Crit Care Med 2010; 38: 1284-90

脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血の死亡率は50%にものぼる。死因の大半は、遅発性脳虚血および脳血管攣縮である。動物の虚血性脳傷害モデルを用いた実験では、マグネシウムを投与すると神経保護作用が得られることが明らかにされている。

前向き無作為化偽薬比較対照試験を行い、硫酸マグネシウムの静注により血清マグネシウム濃度を高く保ち、脳動脈瘤破裂後の脳虚血抑制効果が得られるかどうかを検証した。脳神経外科ICUに入室した患者(110名)を硫酸マグネシウム静注群(16mmolボーラス投与の後、8mmol/hr持続静注)または対照群に無作為に割り当てた。遅発性脳虚血の有無は、頭部CTを繰り返し撮影し評価した。

脳血管攣縮の徴候のなかった場合と比較し、脳血管攣縮の徴候があった場合の方が、マグネシウム投与による遅発性脳梗塞抑制効果が高かった(マグネシウム群28%、対照群58%)。

解説
本研究で、硫酸マグネシウム持続静注の効果と安全性が示された。血漿マグネシウム濃度の目標値を2.0-2.5mMとしてマグネシウムを投与したところ、遅発性脳梗塞の発生を抑制することができた。この方法は、クモ膜下出血に対する治療法の一つとして有望である。

Early vs Late Tracheotomy for Prevention of Pneumonia in Mechanically Ventilated Adult ICU Patients: A Randomized Controlled Trial. JAMA 2010; 303: 1483-9

人工呼吸管理が長期に及ぶ患者に対しては、気管切開が行われることが多い。しかし、その最適な実施時期は、考え方によって大きな隔たりがある。気管切開の実施時期によって、人工呼吸器離脱開始までの日数、有害事象(VAPを含む)の発生率、そして総医療費が変化する可能性がある。

本研究は多施設無作為化比較対照試験であり、早期(気管挿管から6-8日後)気管切開と晩期(気管挿管から13-15日後)気管切開の有益性を比較検討した。研究対象候補として登録後48時間のうちに、呼吸状態が悪化し、SOFAスコアが変化しないか悪化し、肺炎が発生しなかった患者(600名)を、早期気管切開群または晩期気管切開群に無作為に割り当てた。

気管切開術の大多数は、経皮的に行われた。VAP発生率は両群同等であった(早期群14% vs. 晩期群21%; P=0.07)。28日目における二次エンドポイントについても同様で、人工呼吸器非使用日数(早期群11日 vs. 晩期群6日)、人工呼吸器離脱成功患者の占める割合(早期群77% vs. 晩期群68%)、ICU退室率(早期群48% vs. 晩期群39%)および生存率(早期群74% vs. 晩期群68%)はいずれも両群同等であった。

解説
本研究では、人工呼吸管理が行われるICU患者では人工呼吸開始後第8日以前に気管切開を行っても、第15日目頃に行った場合を凌駕する有益性は得られないという結果が示された。院内肺炎および長期転帰についても有意差は認められなかった。したがって、気管切開は第13-15日目以前には行うべきではないと考えられる。

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