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麻酔文献レビュー2010年9月② [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年9月号より

The Role of Reputation in U.S. News & World Report's Rankings of the Top 50 American Hospitals. Ann Intern Med 2010; 152: 521-5

U.S. News & World Reportが毎年発表する、12の分野における全米トップ50病院ランキングが、市場展開の材料や医療制度改革におけるモデル例として使用されることは珍しくない。しかし、このようなランキングは、医療の質に関する客観的評価と主観的評価をごちゃまぜにして作られている。そして、世評のみによっての相対的順位決定が定量評価されたためしはない。

2009年版 U.S. News & World Report に掲載された12分野それぞれのトップ50病院の相対的順位決定において世評が果たした役割を定量評価する目的で、横断的研究を行った。無作為に抽出した250名の専門医から得た調査結果を用いて主観的評価を割り出した。U.S. News & World Reportのランキングにおいて設定されている主観的項目および客観的項目を用いて、病院の優劣を示す点数を分野ごとに算出した(U.S. News & World Reportが算出している点数と同一)。

専門医による主観的評価点数が30点以上であったのは、トップ50病院のうちわずか4%を占めるに過ぎなかった。総合ランキングについては、専門医による主観的評価点数による平均ランキングとU.S. News & World Reportのランキングが一致した(第一位の病院については100%、トップ5病院については97%、トップ10病院については91%、トップ20病院については89%で一致)。分野別ランキングについても、同様の傾向が認められた。リスク調整後死亡率、患者安全指標、看護師:患者比といった他の要素については、トップ50病院の中における差は認められなかった。

解説
現在、「成果報酬型支払制度(P4P)」を導入しようとする機運が高まっている。この支払制度を実施するには、病院の質に関する客観的情報が必要である。ニュース媒体などで病院ランキングが発表されるが、このようなランキングは客観的データではなく主観的な世評に基づいて作られていると考えられる。

Trends, Major Medical Complications, and Charges Associated With Surgery for Lumbar Spinal Stenosis in Older Adults. JAMA 2010; 303: 1259-65

近年、脊椎手術の件数が増加している。しかし、色々な術式の中から、ある特定の術式を選ぶ方法についての明確な診療ガイドラインは存在しない。術式によって有益性と危険性の様態は異なるため、どのような術式が実際に行われていて、合併症発生率がどれほどであるかを知ることは重要である。さらに、基礎疾患があれば合併症の危険性は増す可能性があり、術式の選択においては基礎疾患を考慮する必要があると考えられる。特に、年配者では基礎疾患を有することが多いため、このような配慮が重要である。

メディケアのデータベースを対象とした遡及的解析を行い、腰椎脊柱管狭窄症に対する手術様式、合併症および医療費の傾向を検証した。メディケア受給者に対して行われた腰椎脊柱管狭窄症の手術(2007年1~11月に行われた32152件)を、除圧のみの手術、簡単な脊椎固定術(例;一または二椎間の手術、前方または後方のどちらかの固定術)または複雑な脊椎固定術(例;三椎間以上の手術、前方および後方固定術の同時実施)のいずれかに分類した。

手術実施率と簡単な脊椎固定術は2002年から2007年のあいだにわずかに低下していたが、複雑な脊椎固定術の実施率は15倍に増加していた。致死的合併症の発生率は、年齢、手術侵襲度および基礎疾患の重症度が増すほど高かった。年齢、基礎疾患、脊椎手術の既往およびその他の特性について調整したところ、複雑な脊椎固定術の致死的合併症発生率のオッズ比は、除圧のみの手術と比較し2.95倍であった(95%CI, 2.50-3.49)。30日以内の再入院率は、複雑な脊椎固定術群では13.0%であったが、除圧のみの群では7.8%であった(調整オッズ比, 1.94; 95%CI, 1.74-2.17)。

解説
2002年から2007年にかけてのメディケア請求の遡及的解析を行ったところ、65歳以上の患者に対する脊柱管狭窄症の実施率は比較的一定して推移していることが明らかになった。しかし、複雑な術式による脊椎固定術の占める割合は大幅に上昇した。複雑な手術を受ける患者は、除圧のみの手術を受ける患者と比べ、致死的合併症が発生するリスクが高いことが分かった。したがって、侵襲の大きい脊椎手術を行う際は、脊椎病変だけでなく患者の年齢と基礎疾患を考慮して手術の可否を決定すべきである。
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