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輸液動態学~理論④ [anesthesiology]

Volume Kinetics for Infusion Fluids

Anesthesiology 2010年8月号より

結果の表し方

以上のような解析を行った結果は、被験者一人一人のパラメータ予測値の平均値(table 2)として表すこともできるし、得られたパラメータ予測値と血漿増大量のノモグラムまたはプロット図として表すこともできる(fig. 5)。

Appendix 2に示した微分方程式を用いれば、有用な情報をもたらす数多くの予測が可能である。

1. 2分画モデルではVtの増大分をプロットして知ることができる。他の方法ではこのようにVt増加量を知ることは不可能である(fig. 5A)。

2. 投与された輸液製剤の分布様態を計算して解析することができる。これは、投与後の経過時間を問わず可能である。この際、排泄速度はCl (vc-Vc)/Vcという式から求める。増大後のVcおよびVtの容量は、VcとVtの容量増大割合(つまり希釈率)と、希釈前のそれぞれの容量との積で表される(fig. 4)。分布と排泄の様態はコンピュータによって得られたプロット図によって示すこともできる(figs. 6および7)。

3. 今までに一度も行っていない輸液法の転帰を予測するにはシミュレーションが有効であろう(fig. 8)。その前提として、異なるいくつかの輸液量および輸液速度において得られるパラメータが、どれも同じような血漿希釈曲線を示す必要がある(線型モデル)。

この点において、今までに最も詳しく評価が行われているのは2.5%ブドウ糖溶液である。その中の一編の研究では、6人の健康被験者に対し、2.5%ブドウ糖溶液10mL/kgおよび15mL/kgを30分で、15mL/kgおよび25mL/kgを60分で投与した。計24回の輸液実験における、血漿希釈シミュレーションのバイアス(残差の中央値)は平均-0.009希釈率であった。この誤差の三分の二は、反跳性高血糖を血糖動態によって予測することができなかったことによって生じた。したがって、真の誤差(絶対残差の中央値)は0.026希釈率となる。

4. シミュレーションは実験設計の参考にするために行われる。例えば、2種類の輸液製剤について同時に血漿増大量を測定することは現実には不可能である。だが、輸液動態解析を行えば可能である。2種類の輸液製剤のうちどちらかに「内因性」効果があるか否かを検証する際に、輸液速度をどう設定するかは重大な問題である。膠質液やショック患者に対する人工血液の研究でも、同じような問題が立ちはだかっている。

教訓 酢酸リンゲル液の排泄クリアランス(table 2)は、健康被験者で60-110mL/min、開腹術21mL/min、ラパコレ7mL/min、甲状腺手術10mL/min、正常妊娠36mL/min、子癇前症125mL/minです。
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