SSブログ

集中治療文献レビュー2010年7月① [critical care]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年7月号より

Mechanism, Glasgow Coma Scale, Age, and Arterial Pressure (MGAP): A new simple prehospital triage score to predict mortality in trauma patients

Crit Care Med. 2010 Mar;38(3):831-7.

外傷センターで重症患者の急性期治療を開始すると、全死亡リスクが25%ほど低下する。数々のトリアージスコアが作成されてきたが、その多くは複雑すぎて病院前救護の現場では使用に堪えない。

本研究は、外傷患者の死亡率に関わる病院前因子の評価を目的とした多施設前向き疫学的観測研究である。調査はフランスに所在する大学病院およびそれ以外の病院で行われた。医師が参加する救急隊が病院前救護を担当した。簡便なスコア(受傷機転、GCS、年齢および収縮期動脈圧から構成されるスコア[MGAPスコア])を作成し、トリアージ用外傷スコア(T-RTS)、改訂外傷スコア(RTS)および外傷重症度スコア(TRISS)と比較した。病院前救護において集中治療が開始された外傷患者(1360名)についての評価が行われ、1003名を対象にMGAPスコアの妥当性を検証した。MGAPスコアによるトリアージは、T-RTSまたはRTSと同等の結果をもたらした。しかし、感度を95%以上に設定したところ(重症度を低く判定してしまうundertriageの発生率が5%未満)、MGAPスコアはT-RTSおよびRTSよりも特異度が高く正確であり、TRISSと同様の精度を発揮することが明らかになった。MGAPスコアを用いて患者を低リスク(23-29点)、中リスク(18-22点)または高リスク(18点未満)に分類し各群の死亡率を算出したところ、それぞれ2.8、15および48%であった。外的妥当性を検討したコホート(1003名)においても、同様の結果が得られた。

解説
外傷患者において簡便なスコア分類で死亡率を予測することができれば好都合である。ここに紹介した前向き多施設大規模コホート試験で検討されたMGAPスコアは、そのような期待に応える分類法である。外傷患者のトリアージおよび管理にMGAPがおよぼす影響の検討と、その外的妥当性の確立が今後の課題である。

A multifaceted program to prevent ventilator-associated pneumonia: Impact on compliance with preventive measures

Crit Care Med. 2010 Mar;38(3):789-96.

VAP予防ガイドラインが公表されてなお、ICUで発生する院内感染のうち最も頻度が高いのは未だにVAPである。VAP予防策の周知と徹底が、VAPの発生頻度を低下させることにつながると考えられる。

この研究では、VAP予防を目的とした多面的プログラムで取り上げられている手段の実施率が、介入前と介入後にどのように変化したかを、2年にわたり観測した。VAP予防プログラムの対象は医療従事者全員である。このプログラムには、講習会、実地調査、達成度のフィードバック、技術向上指導および実施忘れ防止策などが盛り込まれた。実施率の評価は一回あたり4週間で、5回行われた(介入前、介入後1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月および24ヶ月)。

調査の対象となったのは、医師(14名)、看護婦(53名)、看護助手(30名)および理学療法士(5名)であり、人工呼吸日数としては1649日であった。手洗いと、手袋およびガウンの着用については、当初から実施率は高く(それぞれ68%、80%)、その後もずっと大きな変化はなかった。その他の予防手段の実施率は、当初は低く、時間が経つにつれ有意に増加した(P<0.0001)。VAP発生率は、プログラム導入前は26.7%であったが、プログラム導入1年後には15.3%、導入2年後は11.1%に低下した(全期間で51%低下;P<0.0001)。

解説
この前後比較研究では、予防プログラムの導入によりVAP発生率が有意に低下することが示された。ICUにおける合併症発生率および死亡率を低下させるには、看護の質を最高度に引き上げることが重要でありかつ有効であることが、本研究では強調されている。

コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。