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集中治療文献レビュー2010年6月② [critical care]

Anesthesia Literature Review:Critical Care Medicine

Anesthesiology 2010年6月号より

Corticosteroid treatment and intensive insulin therapy for septic shock in adults: a randomized controlled trial

JAMA.2010 Jan 27;303(4):341-8

敗血症性ショックは感染が進展して発生する。感染性疾患による重大な合併症の一つが敗血症性ショックである。その成因の一部には、視床下部-下垂体-副腎系の機能不全が関わっている。視床下部-下垂体-副腎系の機能不全がある患者に副腎皮質ステロイドを投与すれば、生存率が向上する可能性があるが、同時に高血糖による悪影響が懸念される。

本研究は多施設無作為化試験であり、ICUに収容されている敗血症性ショック患者に副腎皮質ステロイドを投与し、血糖管理をインスリン強化療法で行った場合と、従来法で行った場合とを比較した。多臓器不全を呈する敗血症性ショック患者を対象に、以下のいずれかの群に割り当てた:ハイドロコルチゾンのみを投与しインスリン持続静注(インスリン強化療法)を行う群(126名)、ハイドロコルチゾンとフルドロコルチゾンを投与しインスリン持続静注(インスリン強化療法)を行う群(129名)、ハイドロコルチゾンのみを投与し従来法で血糖管理を行う群(138名)、ハイドロコルチゾンとフルドロコルチゾンを投与し従来法で血糖管理を行う群(116名)。

インスリン強化療法群の方が従来法群と比べ血糖値が著しく低かった(P<0.00001)。インスリン強化療法群では重篤な低血糖(<40mg/dL)の発生件数が従来法群より多かった(P=0.003)。インスリン強化療法群と従来法群およびハイドロコルチゾン単独群とハイドロコルチゾン/フルドロコルチゾン併用群のいずれの比較においても、院内死亡率(P=0.50およびP=0.50)と全生存率(P=0.78およびP=0.61)に有意差は認められなかった。ICU滞在期間の中央値にも差はなかった(インスリン強化療法群および副腎皮質ステロイド二剤併用群では10日、従来法群および単剤群では9日)。ハイドロコルチゾン/フルドロコルチゾン併用群は、ハイドロコルチゾン単独群と比べ重複感染の発生例が有意に多かった(P=0.02)。

解説
ICU患者に対するインスリン強化療法について今まで示されてきた懸念が、この堅牢な計画の下行われた多施設無作為化比較対照試験によって確認されるとともに新たな知見が加わった。本研究ではインスリン強化療法もフルドロコルチゾン併用も院内死亡率や全生存率に影響を及ぼさないことが示された。敗血症性ショック患者にハイドロコルチゾンを投与する場合、インスリン強化療法を行っても、フルドロコルチゾンを併用しても何ら効果は期待できないと考えられる。

A protocol of no sedation for critically ill patients receiving mechanical ventilation: a randomised trial

Lancet.2010 Feb 6;375(9713):475-80.

鎮静の一時中断を毎日実施すると、PTSD、肺炎、出血などをはじめとする合併症の危険性が減少することが複数の研究で明らかにされている。しかし、大半の病院では依然として、中断なしの持続的鎮静が気管挿管下の人工呼吸を要する重症患者に対する標準的な管理法である。

本研究はデンマークに所在する単一施設で行われた前向き無作為化試験であり、鎮静方法と人工呼吸期間の相関が評価された。鎮静なしで鎮痛薬(モルヒネ)の静脈内投与のみの群か、鎮痛に加え鎮静(当初48時間はプロポフォール、その後はミダゾラム)を行い、一日一回中断し覚醒するのを確認してから再開する群のいずれかに患者を無作為に割り当てた。

鎮静なしの群(55名)の方が鎮静を行った群(58名)より人工呼吸器非使用日数が有意に多かった。(平均日数13.8日 vs 9.6日; P=0.0191)。ICU滞在日数も、鎮静なしの群の方が鎮静を行った群より有意に短かった(13.1日 vs 22.8日; P=0.0039)。死亡率、事故抜管率、頭部CTまたはMRI実施率およびVAP発生率については有意差は認められなかった。興奮を伴う譫妄の発生数(P=0.0400)およびハロペリドール投与回数(P=0.01)は鎮静なしの群の方が多かった。

解説
複数の研究や無作為化試験の結果を受け、ICUにおいて従来行われてきた人工呼吸患者に対する深い鎮静が廃れてきている。本研究では、人工呼吸患者に鎮静を行わなくても、有害事象の増加は見られず安全な管理が可能であることが示された。しかし、この研究では患者一人に対して一名の看護師が配置され、必要であればさらに増員するという対応がとられており、こうした手厚い態勢が本研究の結果に影響を及ぼした可能性がある。この知見が、他のいろいろな状況にも広く当てはまるかどうかをはっきりさせるには、さらに研究を積み重ねる必要がある。

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