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グラム陰性菌による院内感染~血流感染② [critical care]

Hospital-Acquired Infections Due to Gram-Negative Bacteria

NEJM 2010年5月13日号より

院内肺炎と同様に、院内血流感染でも適切な抗菌薬の投与が遅れると死亡率が上昇することが明らかにされている。ただし、死亡率上昇を示すデータは主にグラム陽性菌感染症例において得られたものである。グラム陰性菌による血流感染に対する初期治療の臨床効果についてのデータでは、一定の傾向は認められない。免疫抑制状態、ICU在室中、大腿部からのカテーテル留置、他部位(特に肺、消化管または腹腔内)のグラム陰性菌感染、耐性菌感染リスク(Table 1)などに該当する患者では、グラム陰性菌感染も想定して経験的抗菌薬投与を開始すべきである。さらに、来院時に血流感染が疑われ医療関連感染のリスクがある患者では、血液培養の結果を待たずに当初から広域スペクトラム抗菌薬による経験的治療を開始しなければならない。中心静脈カテーテル関連血流感染の管理法についての詳細なガイドラインが、昨年発表されている。

中心静脈カテーテルによる血流感染は、予防がこの上なく重要である。エビデンスに準拠した予防法を遵守すると、極めて有効であることが示されている(Table 3)。こういった費用対効果の高い予防策を、病院全体で採用すべきである。これ以外にもいろいろな予防策について、有効性を裏付けるエビデンスが発表されている。例えば、殺菌剤あるいは抗菌薬含浸カテーテルの使用、クロルヘキシジン含有被覆材の使用などである。しかし、以上のような予防策を遵守した場合の、費用対効果はあまりよく分かっていない。

Table 3 いろいろな院内感染の予防ガイドライン

中心静脈カテーテル関連血流感染
挿入に先立ち、中心静脈カテーテルに接触する医療従事者を対象に感染予防策についての教育を行う。
感染予防策の遵守を確実なものとするために、カテーテル挿入チェックリストを用いる。
カテーテル挿入または操作に先立ち定められた方法で手洗いを行う。
成人では大腿静脈からの挿入を避ける。
必要物品がすべて一包化されたカテーテルキットを用い、挿入時には高度無菌遮断予防策(maximal sterile barrier precaution)を実施する。
月齢2ヶ月を超える患者には、クロルヘキシジンを主成分とした消毒薬で皮膚消毒を行う。
挿入後は、カテーテル操作に先立ちカテーテル接続部および注入口を消毒する。不要であればカテーテルは抜去する。
成人で皮下トンネルを作成しない場合は、透明な被覆材を用い5~7日おきに挿入部をクロルヘキシジン主成分の消毒剤で消毒する(ガーゼで被覆する場合は2日ごと)。被覆材が汚染したり、はがれたり、じくじくしたりしていればさらに頻繁に消毒を行う。
血液製剤または脂肪製剤の投与には使用していない輸液ルートは、96時間を超えない間隔で交換する。
透析用カテーテル刺入部位は抗菌薬軟膏を塗布する。
血流感染の監視を行う。
通常のやり方では感染を十分に制御することができない病院では、月齢2ヶ月以上の患者では毎日クロルヘキシジン清拭を行う。成人患者では殺菌剤含浸または抗菌薬含浸カテーテルを使用する。月齢2ヶ月以上の患者ではクロルヘキシジン含有被覆材を用いる。カテーテルのロックには抗菌薬溶液を用いる。

教訓 免疫抑制状態、ICU在室中、大腿部からのカテーテル留置、他部位(特に肺、消化管または腹腔内)のグラム陰性菌感染、耐性菌感染リスクがある患者の血流感染では、グラム陽性菌だけでなくグラム陰性菌感染も想定して経験的抗菌薬投与を開始すべきです。中心静脈カテーテルによる血流感染は、予防が重要です。

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