グラム陰性菌による院内感染~血流感染① [critical care]
Hospital-Acquired Infections Due to Gram-Negative Bacteria
NEJM 2010年5月13日号より
血流感染
血流感染は依然として命取りである。大半の血流感染では中心静脈カテーテルに関連して発生する。しかし中には、肺、消化管、腹腔内などのグラム陰性菌感染に起因する血流感染もある。米国のICUで発生する血流感染の約30%はグラム陰性菌が起因菌である。一方、全病棟を対象とした調査では、グラム陰性菌による血流感染の割合はこれを下回る。
細菌にとって都合のいい侵入経路さえあれば、あらゆるグラム陰性菌が血流感染を起こしうるが、最も頻度が高いのはクレブシエラ属、大腸菌、エンテロバクター属および緑膿菌である。前項で触れた院内肺炎を引き起こす細菌と同様に、耐性菌の問題が表面化している。特に、広域スペクトラムのセフェム系薬およびカルバペネム系薬に対する耐性菌の出現が懸念されている。現に、米国全土の病院において血流感染症例から分離されたKlebsiella pneumoniaeの27.1%が第3世代セフェム耐性、10.8%がカルバペネム耐性であったという調査結果が報告されている。欧州の一部では、耐性菌の検出率がこれよりもっと高いとされている。
現在もっとも困難な問題として立ちはだかっているのが、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の拡大である。カルバペネマーゼはβラクタマーゼの一種であり、K. pneumoniaeカルバペナマーゼとかKPCとも呼ばれる。カルバペネマーゼを産生する細菌では、セフェム系薬(セフェピムを含む)、モノバクタム系薬(アズトレオナム)およびカルバペネム系薬に属するあらゆる抗菌薬に対する感受性が低下している。米国では少なくとも20州の病院で、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌が検出されている。南アメリカ、イスラエルおよび中国からも検出例が報告されている。以上の国々より頻度は低いが、欧州からも発生報告がある。アウトブレイクを起こす菌種の遺伝子型が似通っていることから、進行中の感染拡大を防ぐため厳重な感染制御策を徹底することが不可欠である。カルバペネマーゼ遺伝子は可動性遺伝因子(主にプラスミドおよびトランスポゾン)によって他のグラム陰性菌へ転移することがある。おそらくこの転移によって、カルバペネマーゼ遺伝子がグラム陰性菌全般に広がったものと考えられている。さらに、カルバペナマーゼ遺伝子は、他の種類の耐性を生起する遺伝子と共存することが多い。例えば、ESBLs遺伝子の中で最も拡大しているblaCTX-M-15遺伝子、アミノグリコシド耐性遺伝子およびプラスミド性キノロン耐性遺伝子(qnrAおよびqnrB)などである。このように複数の耐性遺伝子が存在すると、治療の選択肢は無きに等しい。ブドウ糖非発酵クラム陰性菌について触れた部分で述べた通り、K. pneumoniaeの中には現在使用されているすべての抗菌薬(ポリミキシンを含む)に対する耐性を有するものがある。
教訓 ICUで発生する血流感染の約30%はグラム陰性菌が起因菌です。カルバペネマーゼ産生菌の拡大が問題になっています。
NEJM 2010年5月13日号より
血流感染
血流感染は依然として命取りである。大半の血流感染では中心静脈カテーテルに関連して発生する。しかし中には、肺、消化管、腹腔内などのグラム陰性菌感染に起因する血流感染もある。米国のICUで発生する血流感染の約30%はグラム陰性菌が起因菌である。一方、全病棟を対象とした調査では、グラム陰性菌による血流感染の割合はこれを下回る。
細菌にとって都合のいい侵入経路さえあれば、あらゆるグラム陰性菌が血流感染を起こしうるが、最も頻度が高いのはクレブシエラ属、大腸菌、エンテロバクター属および緑膿菌である。前項で触れた院内肺炎を引き起こす細菌と同様に、耐性菌の問題が表面化している。特に、広域スペクトラムのセフェム系薬およびカルバペネム系薬に対する耐性菌の出現が懸念されている。現に、米国全土の病院において血流感染症例から分離されたKlebsiella pneumoniaeの27.1%が第3世代セフェム耐性、10.8%がカルバペネム耐性であったという調査結果が報告されている。欧州の一部では、耐性菌の検出率がこれよりもっと高いとされている。
現在もっとも困難な問題として立ちはだかっているのが、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌の拡大である。カルバペネマーゼはβラクタマーゼの一種であり、K. pneumoniaeカルバペナマーゼとかKPCとも呼ばれる。カルバペネマーゼを産生する細菌では、セフェム系薬(セフェピムを含む)、モノバクタム系薬(アズトレオナム)およびカルバペネム系薬に属するあらゆる抗菌薬に対する感受性が低下している。米国では少なくとも20州の病院で、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌が検出されている。南アメリカ、イスラエルおよび中国からも検出例が報告されている。以上の国々より頻度は低いが、欧州からも発生報告がある。アウトブレイクを起こす菌種の遺伝子型が似通っていることから、進行中の感染拡大を防ぐため厳重な感染制御策を徹底することが不可欠である。カルバペネマーゼ遺伝子は可動性遺伝因子(主にプラスミドおよびトランスポゾン)によって他のグラム陰性菌へ転移することがある。おそらくこの転移によって、カルバペネマーゼ遺伝子がグラム陰性菌全般に広がったものと考えられている。さらに、カルバペナマーゼ遺伝子は、他の種類の耐性を生起する遺伝子と共存することが多い。例えば、ESBLs遺伝子の中で最も拡大しているblaCTX-M-15遺伝子、アミノグリコシド耐性遺伝子およびプラスミド性キノロン耐性遺伝子(qnrAおよびqnrB)などである。このように複数の耐性遺伝子が存在すると、治療の選択肢は無きに等しい。ブドウ糖非発酵クラム陰性菌について触れた部分で述べた通り、K. pneumoniaeの中には現在使用されているすべての抗菌薬(ポリミキシンを含む)に対する耐性を有するものがある。
教訓 ICUで発生する血流感染の約30%はグラム陰性菌が起因菌です。カルバペネマーゼ産生菌の拡大が問題になっています。
2010-05-31 07:21
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