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集中治療文献レビュー2010年4月② [critical care]

Anesthesia Literature Review Critical Care Medicine

Anesthesiology 2010年4月号より

International Study of the Prevalence and Outcomes of Infection in Intensive Care Units
JAMA. 2009;302(21):2323-2329.

世界中どこのICUでも、合併症および死亡の大きな原因は感染である。そして、感染関連死亡例は増えている。ICUにおける感染に関する世界規模のデータはあまり多くはない。

世界各国におけるICUで発生した感染の数と様式についての調査を行う目的で、The Extended Prevalence of Infection in Intensive Care Ⅱ(EPIC Ⅱ)研究を実施した。この研究は、ある特定の一日における感染有病率の評価と追跡調査を行う前向き研究であり、対象患者数は14,414名であった。

感染有病率評価日において対象患者の51%において感染が認められ、その大半(64%)が呼吸器感染症であった。感染有病率評価日に先立つICU滞在期間が長いほど、感染有病率が高かった。特に、耐性ブドウ球菌、Acinetobacter、Pseudomonas属、およびカンジダ属による感染でその傾向が顕著であった。

中南米における感染有病率が最も高く(60%)、アフリカが最低であった(46%)。北米以外ではグラム陰性菌による感染の方がグラム陽性菌による感染よりも多かった(全体ではグラム陰性菌62%、グラム陽性菌47%、真菌19%。北米ではグラム陰性菌49.9% vs グラム陽性菌55.1%)。医療支出の少ない国ほど感染発生率が高かった。

感染患者(6659名)
ICU死亡率25.3%、院内死亡率33.1%、ICU在室日数16日、入院期間29日

非感染患者(6352名)
ICU死亡率10.7%、院内死亡率14.8%、ICU在室日数4日、入院期間13日

ICU在室日数以外はいずれもP<0.001であった。

解説
この大規模国際疫学研究は、75ヶ国に所在する1265か所のICUで行われた。現在のICUにおける感染の全体像を示すものである。感染は依然として合併症および死亡率に直接的な影響を与える、大きな頭痛の種である。感染の発生率およびタイプ、そして感染による死亡率は国によって大きく異なることが明らかになった。感染症予防および管理の改善策の国際的な違いを明らかにし、十分な対策が講じられていない地域では適切な改善策を実施すべきであると考えられる。

Hospitalized Patients with 2009 H1N1 Influenza in the United States, April–June 2009
N Engl J Med. 2009 Nov 12;361(20):1935-44.

2009年には、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスが出現し世界中に広がった。9月までに191ヶ国から新型インフルエンザ感染患者の報告があった。重症化の危険因子および臨床的特徴については、今も発表が相次いでいる。この論文では、2009年4月から2009年6月までの期間に米国でH1N1インフルエンザにより入院した患者の臨床的特徴が報告された。

インフルエンザ様症状を呈しH1N1インフルエンザ検査陽性であった24州272名(当該期間中にCDCへ報告のあった全症例の25%)のデータを収集した。18歳未満の患者が45%、65歳以上が5%を占めた。患者の73%には1つ以上の基礎疾患(喘息、糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、神経疾患、妊娠など)があった。小児では60%、成人では83%、65歳以上の高齢者では100%に基礎疾患があった。入院時に胸部X線写真が撮影された249名のうち、40%に肺炎の所見が認められた。抗ウイルス薬使用の有無に関するデータが記録されていた268名のうち、抗ウイルス薬が使用されていたのは200名であり、発症後3日目(中央値)に投与が開始されていた。

全体の25%がICUへ収容され、7%が死亡した。死亡患者の大半(68%)には基礎疾患があった。死亡例では全例で抗ウイルス薬が投与されていた。しかし、症状発現から48時間以内に抗ウイルス薬の使用が開始されていた例は皆無であった。

解説
この論文は、米国における2009年のH1N1インフルエンザ入院症例についてのはじめての疫学データである。H1N1インフルエンザ入院例の背景因子(65歳未満、妊娠、免疫抑制など)の検討が行われた。さらに病的肥満をはじめとするその他の因子も、H1N1インフルエンザ重症化に関与していることが明らかにされた。症状が発現してから48時間以内に抗ウイルス薬の投与を開始すると、患者によっては有効であることが分かった。

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