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麻酔文献レビュー2010年4月① [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review Perioperative Medicine

Anesthesiology 2010年4月号より

Strokes after cardiac surgery and relationship to carotid stenosis.
Arch Neurol. 2009 Sep;66(9):1062-4.

脳卒中をはじめとする脳血管合併症は、心臓手術後の重篤な合併症や死亡の大きな原因の一つである。術後脳血管障害の発生には複数の要因が関与するものの、予測因子として頸動脈の有意狭窄が挙げられる。頸動脈手術および心臓手術が、脳血管障害のリスク低減を目的として合併手術として実施されることは珍しくない。しかし、このような合併手術が実際には脳血管障害を含む有害事象をかえって増やしている可能性もある。

この遡及的研究は、単一の高次機能病院で行われた。目的は、頸動脈の有意狭窄が心臓手術後の脳血管障害の発生に及ぼす影響についての厳密な検証である。冠動脈バイパス術、大動脈弁置換術、または両者の合併手術を受けた計4335名の患者が対象となった。臨床的に確定診断が下された脳血管障害は、全体の1.8%において当該手術による入院中に発生した。脳血管障害発生例のうち大血管型(large vessel type)はわずか5.3%を占めるに過ぎず、大半(76.3%)は頸動脈の有意狭窄がないのに術後脳血管障害が発生していた。脳血管障害発生例のうち60%の症例では、頭部CT所見から単独の頸動脈領域の病変ではないことが示されていた。

術後脳血管障害発生例のうち94.7%では、頸動脈の有意狭窄との直接的な関連は見出されなかった。頸動脈と心臓の合併手術が行われた症例では、術後脳血管障害発生のリスクが高かった(15.1%)。同程度の頸動脈狭窄があっても、心臓のみの手術を受けた患者では術後脳血管障害発生例は皆無であった(P=0.004)。

解説
心臓手術(冠動脈バイパス術および大動脈弁置換術)後に脳血管障害が発生する症例は少ない。脳血管障害発生例のうち、頸動脈の有意狭窄との関連のないものが90%以上を占める。心臓および頸動脈の合併手術は、脳血管障害のリスクを上昇させる。この研究の著者らは、心臓手術と頸動脈手術を同時実施する必要はないと結んでいる。

Pediatric Pain After Ambulatory Surgery: Where's the Medication?
Pediatrics. 2009 Oct;124(4):e588-95. Epub 2009 Sep 7.

米国では年間500万人以上の子供が手術を受ける。このうち実に75%もの患児がひどい術後痛に見舞われているというのに、帰宅後の疼痛管理を検証する臨床試験は全くと言っていいほど行われていない。術後疼痛管理が適切に実施されないと、予定外の受診が増えることにつながる。このような予定外受診時の診察は、たいていの場合小児科医が行っている。

この研究では、扁桃摘出術またはアデノイド切除術のいずれかの予定手術を受ける12歳以下の患児261名を対象とし、小児の術後疼痛管理の評価が行われた。基準時点のデータは術前に収集し、統一された麻酔方法および術式が全例に適用された。帰宅後の疼痛および鎮痛薬使用量について2週間にわたり記録した。

退院の時点で、看護師が患児の疼痛レベルを0~100までのスケールを用いて評価したところ、30以上の強さの疼痛を訴える患児が27%を占めていた。自宅における親による疼痛評価では、痛みがひどいと評価された症例は退院当日が77%、手術1週間後が49%、手術2週間後では7.5%を占めていた。しかし、対象患児の24%では退院当日の自宅における鎮痛薬使用回数は0回または1回にとどまっていた。手術2週間後までの全期間中に、鎮痛薬を3回以下しか投与されていなかった症例が23%を占めていた。対象患児のうち71%では、自宅における疼痛評価を行った全16回のうち、その評価に従い親が鎮痛薬を投与したのは8回未満であった。

小児手術症例の多くでは、術後疼痛管理が不十分である。術後疼痛が軽度、中等度もしくは重度のいずれの群でも、投与されている鎮痛薬の量に有意差は認められなかった。術後疼痛評価と鎮痛薬投与量のあいだにこのような大きな乖離が認められる理由は不明である。

解説
扁摘後の子供の術後疼痛は、親の評価によるとかなりひどい。しかし、痛みがひどくても多くの場合、鎮痛薬は投与されていない。術後の子供たちに適切な疼痛管理を実施する上での障壁を明らかにするには、さらに研究を重ねる必要がある。
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