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ARDS人工呼吸中の肺胞虚脱・再開通~結果② [critical care]

Lung Opening and Closing during Ventilation of Acute Respiratory Distress Syndrome

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年3月15日号より

虚脱・再開通を呈する肺胞と肺胞歪みの局所分布
Figure 3Aに示す通り、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が少ない患者ではPEEP 5cmH2O、15cmH2Oのいずれであっても頭尾軸上の位置に関わらず虚脱・再開通を繰り返す肺組織量は、非常に少なかった。反対に、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が多い患者では、PEEP 5cmH2Oのときには虚脱・再開通を繰り返す肺組織量は比較的多かった。特に肺尖部から肺門部(肺を10等分し肺尖から数えて2番目から7番目までの領域;Figure 3B)では虚脱・再開通を繰り返す肺組織量が多かった。PEEP 15cmH2OのときにはPEEP 5cmH2Oのときよりも虚脱・再開通を繰り返す肺組織量が全体で有意に少なかったが(PEEP 5cmH2Oのときと比べP<0.05)、8番目から10番目までの領域では有意差は認められなかった(P=1.00)。

リクルートメント可能な肺組織が占める割合が少ない患者では、PEEP 5cmH2Oにおける肺胞の歪みは肺底部へ行くほど有意に小さかった(P=0.002、両側ANOVA;オンライン補遺中のFigure E3)。一方、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が多い患者では、頭尾軸のどの部位でも肺胞の歪みは同等であった(P=0.40、両側ANOVA)。PEEPを15cmH2Oとしたところ、リクルートメント可能な肺組織量の多寡に関わらず肺胞の歪みが有意に増加した(P<0.001、両側ANOVA)。しかし、リクルートメント可能な肺組織が占める割合が多い患者における肺胞歪みの増大は、主に肺尖から肺門にかけての特定の領域にのみ限定して発生していることが窺われた(Figure E3)。

生存率に与える影響
リクルートメント可能な肺組織量の多寡がVILIの発生と臨床転帰に与える影響の評価を試みた。まず、研究開始前の人工呼吸設定における、虚脱・再開通を呈する肺組織量と肺胞の歪みの分析を行った。この分析に当たり、対象患者をリクルートメント可能な肺組織が占める割合によって4群に分類した。過去に我々が発表した通り、一回換気量とPEEPは4群とも同等で(オンライン補遺中のTable E1)、それぞれ約9mL/kg(予測体重)と11cmH2Oであった。リクルートメント可能な肺組織が占める割合が最少の群から三つ目の群までの三群では、肺胞の歪みはほぼ同一であった。リクルートメント可能な肺組織が占める割合が最大の群のみにおいて、肺胞の歪みが他の群より有意に大きかった(Figure 4およびTable E1、P=0.03、片側ANOVA)。翻って、虚脱・再開通する肺組織量は、リクルートメント可能な肺組織量の割合の増大に伴い正比例に増加することが分かった(最小群21±12g → 最大群254±78g、P<0.001、片側ANOVA;Figure 4)。リクルートメント可能な肺組織量の割合が増えるほど、虚脱・再開通する肺組織量が増えるのと同時に、ICU死亡率も比例的に上昇した(Hosmer-Lemeshow の適合度検定でP=0.34、c統計量=0.72)。

VILI発生要因と死亡率のあいだに相関がある可能性について検討するため、死亡の独立予測因子についての多変量解析を行った。SAPSⅡスコアと、研究開始前の人工呼吸器設定で虚脱・再開通を呈する肺組織量の二つの要因が死亡リスク増大と独立した相関を有することが分かった(Hosmer-Lemeshow の適合度検定でP=0.86、c統計量=0.81)。SAPSⅡスコアが1点上昇するころによる死亡のオッズ比は1.10(95%信頼区間1.02-1.18)であった。虚脱・再開通を呈する肺組織量が10g増えることによる死亡のオッズ比も1.10(95%信頼区間1.02-1.18)であった。注目すべき点は、生存群と死亡群のあいだで肺胞の歪みに差が認められなかったことである(Table 2)。PEEPの値と死亡リスク増大とのあいだには独立した相関関係は見出されなかったが、リクルートメント可能な肺組織量の割合が非常に高い患者群における研究開始前の人工呼吸器設定では、生存群の方が死亡群よりもPEEPが有意に高かった(14±4 vs 10±2、P<0.05;Figure 5)。

教訓 リクルートメント可能な肺組織量が多いほど、虚脱・再開通する肺組織量が増え、死亡率も上昇します。リクルートメント可能な肺組織が多い場合は、PEEPが高い方が死亡率が低くなるようです。
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